研究課題/領域番号 |
23720431
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
牧野 冬生 早稲田大学, アジア太平洋研究科, 助教 (50434387)
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キーワード | 文化人類学 / 移民 / 一時帰省 / メキシコ / 都市化 / トランスナショナル |
研究概要 |
平成24年度における重要な課題は、『移民の継続的な移動を中心とした居住形態』、『一時帰省に関わる移民住居建設と都市の変容』、『マイグレーション・シティに関する理論化と考察』の各テーマについて、前年度の抽出した問題点を踏まえて一層の深化をはかることにあった。 第一に、移民の継続的な移動を中心とした居住形態については、初年度のフィールドワークの結果を踏まえて、特に移民の側からのノスタルジア形成と居住形態の変容について重点的な調査を実施した。受け入れ社会(米国)においては、故郷では当然享受しているはずの理想的な自己や生活から阻害されていると感じる移民は多く、そうした点が、一時帰省の頻度や居住形態の変容にどのように影響しているのか調査を実施した。 第二に、一時帰省に関わる移民住居建設と都市の変容については、アカワレスと呼ばれる地区(ハロス郊外)にかつて存在していたアシエンダの屋敷を改装した一時住居の調査と、地元有力者の広大な屋敷の綿密な調査を実施した。この調査から、大農場の地主階級は、現在もハロスの有力者・知識人として都市開発に影響をもっていることを確認できた。 第三に、「マイグレーション・シティ」に関する理論化と考察については、観光的一時帰省を誘発させる戦略として、特に宗教的儀礼と都市開発の関係に焦点を当てた。特に聖母マリアの被昇天祭は、移民コミュニティと地元コミュニティにおいて実施される最も重要な儀礼の一つであり、移民の宗教観、故郷に残された家族を訪問する一時帰省、ノスタルジア形成、さらに巡礼地と改築されたアシエンダを巡るエコツーリズムとの強い関係性を確認できた。 最後に、前年度の残された課題であった「マイグレーション・シティ」の理論化については、ハロスに居住する一家族に焦点を置いて聞き取り調査を実施し、十分な一時資料を得ることが出来た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては、『移民の継続的な移動を中心とした居住形態』、『一時帰省に関わる移民住居建設と都市の変容』、『マイグレーション・シティに関する理論化と考察』の各テーマについて、フィールドワークを踏まえて予定通りの進展があった。 特に前年度に十分な聞き取り調査を実施できなかった「マイグレーション・シティ」の理論化については、ハロスに居住する一家族に焦点を置いて聞き取り調査を実施し、3世代のパーソナルヒストリーについて十分な調査結果を得ることが出来た。一方で、”マイグレーション・シティ”という言葉自体が、本移民現象を表現する言葉として適切かどうかについて再考する必要が生じ、研究協力者と共に今後再検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最終年度にあたる平成25年度は、研究報告書の作成に重点が置かれる。『移民の継続的な移動を中心とした居住形態』、『一時帰省に関わる移民住居建設と都市の変容』、『マイグレーション・シティに関する理論化と考察』の各研究課題を遂行すると共に、補完すべき資料の収集に努める。また、8月にハロストティトランでの現地フィールドワークを継続して実施する予定である。観光的一時帰省を誘発させる戦略として重要な宗教的儀礼である聖母マリアの被昇天祭に参加することで、移民コミュニティと地元コミュニティにおける、それぞれの”移民”をめぐる意味づけを確認する。 本研究成果は、平成26年3月開催予定のSfAA(Society for Applied Anthropology)にて口頭発表し、英文ジャーナルに投稿を予定している。また、本研究の最終的な成果として書籍の出版を予定しており、そのための十分な時間を確保する必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
8月に予定しているメキシコでのフィールドワークの旅費、謝金を計画している。また、追加的な資料購入費と最終的な研究成果についての校閲費を計上している。また、研究発表として、平成26年3月開催予定のSfAA(Society for Applied Anthropology)に参加する際の旅費が主な予算として計上される。
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