研究課題/領域番号 |
23730007
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
安藤 馨 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (20431885)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 法概念論 / 法命令説 / 当為命題 / 表出主義 / 神命説 |
研究概要 |
研究計画の初年度である23年度には、交付申請書に於ける研究実施計画に照らし、特にメタ倫理学に関するサーヴェイが中心的に行われた。道徳言明の意味論と道徳心理学の交絡に関わる問題群の広範かつ精確な把握が目指され、道徳言明の意味論について、既に述べたように実在論的表出主義が念頭に置かれた上でサーヴェイが為された。主として得られた結果は、実在論的表出主義の一類型として、David Copp, "Realist-Expressivism: A Neglected Option for Moral Realism" in David Copp, Morality in a Natural World, Cambridge University Press, 2007 に見るような語用論的表出主義が維持可能であること、またこれと対照的に非認知主義的表出主義に対し、旧来のFrege-Geach問題のみならず、願望思考問題(Wishful-Thinking Problem)などの問題が提示されていること、そしてこれらの問題の解決の見込みが、原理的に言って余り明るいものではないということが確認された。こうした表出主義のサーヴェイに加え、非認知主義的な語用論的な表出という着想を本研究課題の中心的主題である命法の意味論の構築に適用することを視野に、神命説(Divine Command Theory)をその対象として、追加的なサーヴェイが行われた。特にいわゆるEuthyphro問題と命令の権威性の正当化問題が関連していることから、西洋的有神論を巡る宗教哲学の成果を、より詳細に検討する必要性があることが理解された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度実施分として研究計画に予定されたサーヴェイについては、ほぼ問題なく終えられたと言える。ただし、当該主題については学界に於いて現在まさに議論が進行中であるので、次年度以降も継続的にサーヴェイを実施していく必要がある。なお、この過程で、本研究課題全体に於いて、神命説とそれに関連する宗教哲学の諸問題を取り扱わなければならないことが判明したが、これについても本年度に可能な限りで、一定のサーヴェイを実施できたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は、当初申請通りに順調に進展していると考えられるので、24年度以降に於いては予定通り、命法の意味論の哲学的解明に取り組むことになる。特に命法の意味論のサーヴェイに関しては、R.M. Hare の指令主義的メタ倫理学説や、命令の言語行為論的分析といったイギリス系の分析哲学の文献研究はもとより、等閑視されがちなスカンディナヴィアや南米(特にアルゼンティン)の分析哲学の諸文献のサーヴェイにも相当の時間資源を投入する予定である。また、前項で述べたとおり、本研究計画に於いて神命説に関連して宗教哲学の検討が(特にいわゆる内的観点から為される法的言明の意味論を巡って)必要であることも明らかになったため、申請当初より予定されている24年度の課題の一部として、そのサーヴェイが行われる。特に自由意志論と有神論的宗教哲学の交絡を巡る諸問題が一定の重要性を持つものとしてサーヴェイされる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究費については、特に書籍資料を含む物品費については概ね予定通りの執行が行われたところである。今年度の実施の順調な推移から、来年度に於いても概ね同様の使用が予定されている。次年度使用額が生じているのは、本年度に申請した旅費の執行が予定を下回ったためであるが、これは研究課題に関連して行われた研究会報告等につき、他機関などから負担支出があったことによる。これは、研究遂行に於いて他の研究者(群)との協力が積極的に行われたがゆえに生じたものである。他方で、既に述べたとおり、宗教哲学に関係して、当初予定よりもサーヴェイを実施すべき領域が拡大したことから、次年度使用予定研究費がこれに充当されることが予定されている。
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