研究課題/領域番号 |
23730009
|
研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
長 友昭 拓殖大学, 政経学部, 助教 (20555073)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 中国法 / 集団所有権 / 農地 / 財産権 / 収用 / 財産権証 / 物権法 / 請負経営権 |
研究概要 |
平成23年度は、中国の土地所有権制度改革の下で農地の権利の集約化および農民と農地の切り離しがどのように進んでいるのかについて、主に農地をめぐる契約関係の視点から分析し、それがどのような政策に基づいて行われているのかを明らかにすることを目的とした。 まずは、上記の農地の権利の集約化および農民と農地の切り離し問題の把握のために、この問題にかかる基礎資料の収集を行った。本事業では、契約書その他の文書の閲覧・複写や聞き取り調査の方法を採用した。もっとも、外国人である申請者が単身で聴き取り調査や資料を入手するには様々な困難が伴う。そこで、海外共同研究者及びその所属大学の大学院生などと協力して、調査を行った。具体的には、重慶市にある西南大学法学院の黄毅氏及び西南大学に所属すその他の教員・大学院生と協力して、同法学院の研究課題として行われている農村調査と共同での調査を行った。この調査形式では、申請者の側から調査項目の設計を行うことが可能であり、また実際の調査の状況を確認することも可能である。これにより、重慶市の農地の権利関係に関する多数の契約書を入手した。 同様に、福建省アモイ市では、申請者の所属する拓殖大学政経学部と交流協定のあるアモイ大学に協力を求めた。アモイ大学の王虹氏は、日本の目白大学で研究職に就いたこともあって、日本の研究事情を熟知しており、アモイ大学法学院の王永光氏、李平安氏などの協力も得て、同市の資料などを入手することができた。 他方で、山東省の調査予定地では、改革の動向が一段落しており、また、現地協力者の異動等もあって、現地調査は次年度以降の課題とし、文献資料の収集中心に行った。 これらの収集資料から、本研究におけるキーワードともいえる財産権の法的保護に関する実証研究について、論文にまとめることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中国の3地点において実態調査を行う予定であったが、このうち1地点において、研究対象とする改革がひとまず完了したといえる状況が文献資料などにより確認できた。そこで、この地点を継続的に観察しても所期の研究成果が得られない可能性もある。そこで、調査地の変更も含め、現地関係者と交渉・調整をしているため、研究の達成度はやや遅れていると評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた結果を基にして、24年度以降は、農民から切り離された農地の利用形態、権利関係そして農民の暮らしを総合的に把握できるよう聴き取りやアンケートを中心に実態の調査を行う。その際に、調査地域間の経年変化を比較して研究することとし、ある地域での改革が停止したとしても研究の失敗ではなく、停止という結果が比較の対象となり得るものとする。また、調査のカウンターパートとして、申請者の所属機関の交流協定機関や申請者自身のこれまでの人脈を活用し、日本の研究事情の通じた研究協力者の支援を受けて、外国人のみでは困難の伴う現地での調査の障害を少しでも減らして、研究の精度を高められるような計画を立てている。なお、山東省での調査を上海市近郊農村の調査に変更することも計画している。 平成25年度は、過年度の調査で得られた資料の追跡調査のため、および前年度の調査の不足を補うための現地調査を行う。継続的な調査を行うことにより、中国における農地制度の変革の表層だけでなく、長期的かつ動態的な知見も得られ、海外研究協力者にとっても有益であり、それゆえ本研究への協力体制も良好になるものと思われる。 さらに、中国土地所有権制度改革の下で各地に生じている農地争奪問題の法的解決に向けた方策について、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に引き続き、文献の購入および海外実態調査先への旅費を中心に使用することを計画している。また、これまでに得られた資料も多いが、今後の実態調査で得られる資料も多くなると思われる。そこで、これらの資料を整理するための事務機器および事務補助者の雇用を計画している。例えば、スキャナーなどを使った資料の整理および手書き文字の入力作業などの費用である。 他方で、研究の中間的成果の公表も計画しており、そのための研究会参加費など出張による使用も計画している。
|