報告者はすでにセント・ジャーマンのエクイティ思想について、論文をまとめたことがあり、かねてよりエクイティの思想的な側面についての研究を進めてきた。しかしながら、実態、つまり裁判の中にあらわれてくるエクイティについては、それほど多くの判例を調査しておらず、手薄な状態であった。そこで今年度は、思想を踏まえた実態について、判例を中心に調査し、検討を行った。その中で明らかになったことは、(1)エクイティという用語の使い方は多様であること。(2)判例の中にあらわれてくるエクイティという用語には、制定法解釈のエクイティを意味している場合が多いこと。その傾向はとくに16世紀前半までは顕著であったこと。(3)インズ・オブ・コートにおいても同様の傾向がみられること。つまりそのように教育が施されていたと推定されること。(4)16世紀になると大法官府における救済については良心という言葉が使われていること。(5)他方で内心にかかわることも良心という語を利用していること。(6)同様の傾向はインズ・オブ・コートでも見られ、そのような教育が施されていたことが推定されること。(7)エクイティ、良心という用語の使い方の検討を終えた後、ユースの事例の検討を行った。(8)エクイティの史的展開を、ユースから信託への歴史的概略を踏まえて詳らかにしたN.G.ジョーンズ「物的財産の分野におけるエクイティによる介入の諸相」を翻訳し、刊行する。
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