研究課題/領域番号 |
23730011
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
吉岡 すずか 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 特任准教授 (60588789)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 法的支援 / 司法と福祉 / 連携 / ネットワーク / 地域 / 法律専門家 |
研究概要 |
本研究の目的は、支援の現場で法律専門家と福祉職者との連携がいかにして形成されるのか、それが維持・再生産されるのはどのような条件が必要かを探ることにあるが、平成23年度は、連携の実践を多く行っている弁護士からの個別聞き取りを複数実施し多くの事例を収集することができた。また、都市部において行政福祉職側の調査を並行して実施し、法律専門家による支援についての期待と障壁、支援が要請される問題領域、可能な協働のあり方について聞き取った。主な対象は、地方自治体で相談業務に従事する職員、ケースワーカー、地域包括支援センター関係者、社会福祉士、保健士といった人々である。他方で、司法過疎地地へ派遣される弁護士の養成や地域ネットワーキング活動に積極的な取り組みを行っている都市型公設事務所についても調査対象に加え、地域において異業種士が連携するノウハウについて、合同相談会の実践を観察するとともに、弁護士、事務員、行政職者、異業種士業者からヒアリングを集中的に実施した。以上の調査結果から、行政福祉職者と法律専門家の連携に関してさまざまな実践事例やノウハウを収集し、それらを精査の上、異業種間連携の実践について問題類型や支援者別の態様、結合の形態、フロー構造等のパターン等、一定程度整理することができた。これら知見の一部については、日本法社会学会及び司法アクセス学会にて順次報告し、論文としても公表している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の遂行は、準備段階での先行研究を基礎として本研究に速やかに着手できたことと、厚い調査協力が得られたことから、調査計画の一部を繰り上げて実施し成果の一部について順次公表する等、おおむね順調に進展している。次年度は、これまでに得られた知見を補完するために形成された連携構造の変容について追跡調査を実施するが、その準備も進んでおり、本研究のとりまとめに向けて計画を変更する必要はない見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、残りの課題である形成された連携関係の時間的変容を把握するため、本研究の準備段階から継続して情報を収集している対象地を訪問し追跡調査する。調査対象地はいずれも司法過疎地であり、法律専門家の配置・交替がなされており連携の体制継承がいかになされているか把握するのに適している。行政福祉職側の聞き取りを重点的に実施し、連携ネットワーク構造の変容の実態を把握し、行政福祉職側からみた法律専門家との連携における諸条件を明らかにすることを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度は、弁護士側の聞き取りについて全国に点在する対象を個別訪問して実施する予定であったところ、1箇所にて複数実施する環境が得られたことから優先して法律専門家側の調査の遂行を進め、行政福祉職者側の調査についても、対象者の便宜上、並行して遂行することがのぞましかったため、都市部での調査を繰り上げて実施した。平成24年度は、司法過疎地での支援職者側の調査を集中的に実施する予定で、対象となる調査地を数か所訪問し、支援のネットワーク構造の変容について追跡する。その上で、本研究で収集した資料データを精査し全体のとりまとめを行う。
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