現在の日本における法制度をめぐる大きな変革のうち、とりわけ極端なまでの「法化現象」は、従来の成文法規範をめぐる理解ないしそれを前提とした「成文法主義」なる原則に対する再考をも促す、法構造の根幹部分に関わる重大な変化の一である。 本研究では現行法の土台をなす西洋法継受以前の近世日本で培われた様々なレヴェルにおける成文法規に対する理解を、幕府法実務はもとより琉球法や学問史、あるいは明治初期の西洋法ないし西洋近代学問からのインパクトをも精密かつ具体的に分析することによって、法制史学の立場から、成文法典という形態の法がもつ意味合いを改めて再検討し、複眼的な見透しを提供することに努めた。
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