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2011 年度 実施状況報告書

イタリアにおける宗派間の平等処遇と共和主義の機能に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 23730015
研究機関岩手大学

研究代表者

江原 勝行  岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (60318714)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2015-03-31
キーワード政教分離 / 信教の自由 / イタリア
研究概要

2011年度の研究においては,イタリアの公共空間における各宗派に対する信教の自由保障のあり方につき,制度・運用・理論に焦点を当てつつ研究を行い,関連文献の収集・検討等に基づき,以下の考察上の成果を得ることができた。 まず,イタリアにおいて確立されている政教分離体制の基本的特質について,歴史的形成過程を起点として研究を行った。その結果,イタリアでは,19世紀のヨーロッパにおける近代国家の世俗化過程からの揺り戻し傾向である公認宗教体制を否定する一環として,コンコルダート体制(国家とカトリック教会との関係が,相互の合意の下に締結される政教条約によって規律される体制)が創設され,現在のイタリア憲法においても受け継がれているという一連の過程を跡づけることができた。 次に,現在のイタリア憲法において受け継がれたコンコルダート体制と憲法上の諸原則(特に,カトリック信者・非信者を問わない,信教の自由の平等な保障)との矛盾・抵触を調整する法制ならびに憲法判例に関する研究を行った。この作業により,一方では,社会におけるカトリックの事実上の影響力を公共空間においては縮減する,すなわち多様な宗派間の非差別原則を厳格化することをもって,他方では,カトリック以外の宗派に属する諸個人の宗教的属性を法律が積極的に考慮することをもって,宗教的多元主義を十全に確保するという観点が,現在のイタリアにおける信教の自由保障に関わる制度構築ならびに憲法解釈の基本方針となっていることを確認した。この確認の中には,公立学校における宗教教育や冒涜罪の処罰等の具体的諸問題の解決を通じ,かかる基本方針を正当化・精緻化する憲法裁判所の判例理論について検討する作業も含まれている。 以上により,本年度においては,イタリアの政教分離体制に関し,特に制度面および運用面での比較憲法的意義ないし独自性を一定程度明らかにすることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

宗派間における信教の自由の平等保障が憲法裁判所の諸判決を通じどのように図られてきたのかという視点に基づく,憲法判例の検討が本年度の研究においては不十分であったため。平成24年度の研究では,かかる視点に基づく憲法裁判所判例の検討を,考察すべき具体的素材の範囲をより拡大して行う必要がある。 また,平成23年度においては,東日本大震災の影響により本補助金の交付が遅れたため,年度当初に予定していた海外出張を断念した。このことも,上記自己評価の一因である。

今後の研究の推進方策

平成23年度に引き続き,平成24年度においても,イタリアにおける信教の自由の平等保護をめぐる憲法判例ならびに憲法理論に関する文献の収集に基づく検討を中心とした研究作業を想定している。この研究作業を,イタリアの関係諸機関(憲法裁判所・国務院等の国家機関や,イタリアの政教分離原則に関する専門家が所属する大学)への訪問調査,および現地での資料収集によって補強する予定である。

次年度の研究費の使用計画

平成23年度の交付決定額900,000円のうち,367,019円を平成24年度に繰り越すこととした。これは,「現在までの達成度」の理由欄に示したとおり,平成23年度においては本補助金の交付が遅れたため,年度当初に予定していた海外出張を断念したことによる。平成24年度においては,36万円余りの繰越金をそのまま海外出張の経費に充て,イタリアでの調査・文献収集を実行に移す予定である。 本研究に対する補助金交付決定時に交付される予定とされてきた平成24年度の交付金50万円については,平成23年度に引き続き,国内での文献収集・出張等の経費に充当していく予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2012 その他

すべて 学会発表 (1件) 図書 (1件) 備考 (1件)

  • [学会発表] イタリア憲法とEU法・欧州人権条約

    • 著者名/発表者名
      江原勝行
    • 学会等名
      EUインスティテュート・イン・ジャパン早稲田
    • 発表場所
      早稲田大学
    • 年月日
      2011年9月20日
  • [図書] ヨーロッパ「憲法」の形成と各国憲法の変化2012

    • 著者名/発表者名
      中村民雄他
    • 総ページ数
      109‐128
    • 出版者
      信山社
  • [備考]

    • URL

      http://univdb.iwate-u.ac.jp/profile.php

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公開日: 2013-07-10  

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