2010年にフランスにおいて、公共空間において顔を隠す行為を禁止する法律、いわゆる「ブルカ禁止法」が制定された。本研究は、欧州人権裁判所の判例との整合性や共和主義との関係を念頭に置きつつ、「ブルカ禁止法」の制定意図と背景、そして人権保障上の問題点を検証した。制定過程において特に強調された点は、「他者との共生」のためには顔を露わにするということが最低限確保されなければならないという点である。同法は、憲法院による合憲判決を出されているが、欧州人権裁判所の判例に配慮した限定解釈も施されている。どのような運用がなされるのか、今後も検討が必要である。
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