研究課題/領域番号 |
23730017
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
林 知更 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (30292816)
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キーワード | 憲法 / モクラシー / ドイツ |
研究概要 |
平成24年度は、第一に、多層的統治システムにおけるデモクラシーの意義と限界をめぐる諸問題に関する研究を進めた。ドイツにおける、ビスマルク帝国期から現代に至る憲法学上の連邦国家論の流れを分析・検討した論文「連邦と憲法理論―ワイマール憲法理論における連邦国家論の学説史的意義をめぐって(上・下)」を法律時報5月号・6月号に連載し、またEU統合の憲法理論的把握に関する議論を特にデモクラシーとの関連も顧慮しながら分析した論文「ドイツにおけるヨーロッパ憲法論―EUと憲法理論」を中村民雄、山元一(編)『ヨーロッパ「憲法」の形成と各国憲法の変化』(信山社、2012年)において公表した。これとの関連で、連邦およびEUとデモクラシーの関連に関する調査・研究を更に進め、問題の理解を深めることができた。その成果の一部は、奉職する大学の研究会で2013年1月に報告した。2013年2月から3月にかけて、この問題についても造詣の深いChristoph Schoenberger教授を別の科研費で招聘する機会があり、本研究の主題についても実り多い討議・意見交換を行うことができた。 第二に、戦後ドイツ憲法学史におけるデモクラシー理解の変容について研究を進めた。戦後史が徐々に歴史的分析の対象とされる中、戦後公法学史に関してもドイツで業績が蓄積されつつあり、本年は特に2012年に刊行された本格的な通史Michael Stolleis『Geschichte des oeffentlichen Rechts in Deutschland』第4巻を入口としながら、1950年代から70年代の議論状況の展開について研究を進め、いくつかの新しい知見と、次年度以降の研究への重要な手がかりを得ることができた。 第三に、2013年3月にドイツで調査を行い、上記の諸問題について関係する研究者から情報収集及び意見交換等を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでのところ、予定した通り研究を進めることができている。連邦制及びEUとの関係でデモクラシーを考えることによって、これまで多くの知見を得ることができ、またこれについて既に研究成果を公表できた。他方、他の問題領域を含め、ドイツ憲法学史におけるデモクラシー理解の変容を、全体像としてどう理解すべきかについては、最終年度に更に精力を傾注して取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに得られた知見や手がかりを出発点として、とりわけ①政治的意思形成の領域(選挙・政党・公共圏など)、②議会と政府の領域(法律概念や議院内閣制など)、③行政権との関係(行政組織の変容など)、④連邦やEUなど複数の層の関係、といった諸々の問題領域ごとに、デモクラシーの問題がどのような異なった現れ方をするのか、これらを統括する解釈論的及び理論的枠組みをめぐってどのような議論が蓄積されてきたかについて、更に分析と考察を深めるべく試みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、関係する書籍の収集に引き続き努めるとともに、夏にドイツに出張し、関係する研究者との意見交換と情報収集、文献収集を行う予定である。
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