研究課題/領域番号 |
23730018
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
長内 祐樹 金沢大学, 法学系, 准教授 (00579617)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 行政法 / 地方自治法 / イギリス公法 / イギリス地方自治 |
研究概要 |
本年度は、早稲田行政法研究会、あるいは平成24年3月に開催されたイギリス行政法研究会等に参加し、自治体の裁量権に関する日本並びにイギリスにおける立法措置並びに司法統制の仕組みの相違についての知見を広げることができた。 また、イギリスの地方行政の沿革並びに現状にかかわる文献収集を行い、1970年代までのイギリスにおける自治体の財務会計行為に対する外部監査制度の沿革及びその特質についての検討を行った。 その結果、第一に、イギリスにおける自治体監査制度が優れて外部的なものであり、自治体の財務会計行為に対する統制も、納税者と自治体の公共信託関係に基づいた厳格な統制理論によって運営されてきたものであることを明らかにできた。また第二に、イギリスにおける一般的な裁量統制理論である権限踰越の法理が必ずしも厳格なものとはいえないところ、自治体の財務会計行為の適否については、これが公共信託理論に基づいて判断される結果、少なくとも財務会計行為に関しては、より厳格な裁量統制が行われてきたことを明らかにできた。そしてそれらの成果として、「自治体に対する外部監査制度の法と仕組み―英国におけるオーディターによる自治体外部監査制度 その沿革と特質(一)」(金沢法学54巻1号、2011年)を公表することができた。 また、1980年代以降のイギリスにおける自治体の裁量権並びにその統制のあり方について考察する前提としての、日本並びにイギリスにおける立法的な裁量権拡大措置やそのための自治体の組織的なあり方についての若干の検討を行うこともでき、その成果の一部を「地方行政における自治体の裁量権と公私協働」(榊原秀訓編著『行政サービスの提供主体の多様化と行政法』(日本評論社、2012年))、「自治体の広域化と地方自治」(法律時報84巻3号、2012年)として公表することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、本科研の主たる研究対象であるイギリスにおける自治体の財務会計行為についての統制のあり方については、その1970年代までの制度的沿革を検討する一方で、80年代以降については検討の途上である。 しかし他方で、1970年代までの自治体の財務会計行為についての司法統制の基本的姿勢を明らかにできたこと、また、自治体の裁量権のあり方及びその統制と地方分権改革の関連性について、日英両国の比較法的視点からの傾向分析ができたことから、研究初年度としての進捗状況としては概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
来年度も、まず学会や研究会への参加や文献収集を通じて、本研究テーマに関連する情報を積極的に得る。そして80年代以降のイギリスにおける自治体の裁量権について、とりわけその統制システムとしての外部監査制度の沿革と特質を明らかにし、その成果を論文としてまとめ2012年度後半ないし2013年度前半までには公表する予定である。 また、それと同時に、とりわけ財務会計行為に関する自治体の裁量統制の観点から、イギリスにおける2000年以降の地方分権改革の方向性とその意義についての検討を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
来年度の研究費については、物品費としての40万円分は、概ね資料収集のための書籍等に充てる予定である。旅費については国内での研究会、学会等への参加に充てる予定である。
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