研究課題/領域番号 |
23730020
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
小谷 順子 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (40359972)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 表現の自由 / 差別的表現 / 憎悪表現 / 名誉毀損 / 集団誹謗 / ヘイトスピーチ / アメリカ憲法 |
研究概要 |
当該年度には、まず、1940年代から現在までのアメリカにおける憎悪表現(hate speech)規制に関する判例及び学説の展開を検証した論文「アメリカにおけるヘイトスピーチ規制」(駒村圭吾・鈴木秀美編著『表現の自由I―状況へ』(尚学社、2011年刊行)収録)を発表した。 さらに、上記論文及びその他の従前の自己の研究成果を踏まえ、アメリカにおける憎悪表現規制をめぐる議論のうち、とくに「集団誹謗(group libel/defamation)」の概念に基づく表現規制の合憲性をめぐる議論に焦点を当てた研究を行った。 「集団誹謗」とは、人種・宗教的な集団全体を中傷する表現を意味し、かつて、このような表現の規制を「集団」への帰属の重要性等に照らして正当化する見解が唱えられたほか、一部の州及び地方自治体において集団誹謗に対する刑事規制立法が設けられた時期があったが、集団誹謗罪の規定は合衆国憲法修正一条の表現の自由の保障に反するとの批判も有力に唱えられてきた。連邦最高裁は、1950年代の判決において集団誹謗罪を合憲性と判断したものの、以後の判決の中で集団誹謗罪の合憲性を黙示的に否定してきた。一方、近年、新たな集団誹謗規制肯定論が唱えられており、それによると、集団誹謗罪の保護法益を個人の名声を超えた「公序」の要素としての「個人の市民的尊厳」として位置付けて、規制が合憲となる可能性があるという。 当該年度には、集団誹謗規制をめぐる上記のような判例及び学説展開の検証を行ない、集団誹謗規制の今日的意義について検討し、研究会で報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度には、アメリカにおける憎悪表現規制の判例及び学説の展開を検証した論文「アメリカにおけるヘイトスピーチ規制」(駒村圭吾・鈴木秀美編著『表現の自由I―状況へ』(尚学社、2011年刊行)収録)を発表したほか、当初の研究計画どおり、米国の「集団誹謗」の概念の再検証を行なった上で研究会において発表を行なった。さらに、翌年度に開始する予定であった、憎悪表現規制を違憲と判断した連邦最高裁判決(R.A.V. v. City of St. Paul, 505 U.S. 377 (1992))の法廷意見の形成過程を検証するために必要な資料の収集にも着手した。 これらの状況から、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、当初の研究計画どおり、憎悪表現規制を違憲と判断した連邦最高裁判決(R.A.V. v. City of St. Paul, 505 U.S. 377 (1992))の法廷意見の形成過程にかかる資料を用いて、当該法廷意見の形成過程の検証を行ない、これを論文としてまとめた上で発表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、憎悪表現規制を違憲と判断した連邦最高裁判決の法廷意見の形成過程にかかる資料のうち、これまでに収集できていないものを補充した上で、当該法廷意見の形成過程の検証を行ない、これを論文としてまとめた上で発表する予定である。 この作業に伴い、当該研究遂行に不可欠なアメリカ並びに日本の書籍の購入、オンライン・データベースの利用契約、及び資料収集ための出張等として研究費を用いる予定である。
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