研究概要 |
カナダにおいては、刑法及び人権法による憎悪表現規制はいずれも連邦最高裁によって合憲と判断されているが、近年、連邦議会の主導により、連邦の人権法による規制が廃止されるに至った。こうしたカナダにおける憎悪表現規制をめぐる状況に関して前年度に行った学会報告をふまえた研究成果を、「カナダにおける憎悪表現規制―国内人権機関の役割―」と題する論文にまとめ、学会誌『国際人権』第24号(2013年)において発表した。さらに、カナダの連邦人権法が廃止されるに至った際の議論を概観しつつ、同国の状況と、一般的な憎悪表現規制を違憲とする判例法を有するアメリカの状況とを比較した研究成果を、「アメリカとカナダの違いに学ぶヘイトスピーチ規制の法律と判例」と題する記事にまとめ、雑誌『ジャーナリズム』第282号(2013年)において発表した。 なお、アメリカ連邦最高裁は、一般的な憎悪表現規制を1992年に違憲と判断した一方で、憎悪表現の典型である十字架を燃やす行為を明文で規制する州法の合憲性については、1992年判決の争点の規定との差別化を図り、合憲と判断している(2003年)。この2003年判決に焦点を当てつつ、先例との関係や射程を分析した研究成果を、「「十字架を燃やす行為の規制をめぐる憲法問題―The Story of Virginia v. Black, 538 U.S. 343 (2003)---」と題する論文にまとめ、大沢秀介・大林啓吾編『アメリカ憲法判例の物語』(成文堂、2014年)において発表した。 さらに、日本国内における憎悪表現規制について、現行法制下における規制可能性を概観したうえで、京都の朝鮮学校に対する憎悪表現をめぐる一連の刑事及び民事判決を検証しつつ、アメリカ及びカナダの議論をふまえた分析を行った研究成果を、「日本国内における憎悪表現(ヘイトスピーチ)の規制についての一考察」と題する論文にまとめ、慶應義塾大学紀要『法学研究』第87巻2号(2014年)において発表した。
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