本研究では、アメリカとカナダにおける憎悪表現の規制をめぐる憲法論争のうちの日本国内における検証が不十分な諸課題を検証したうえで、アメリカの議論のいかなる部分を日本に導入しうるのかを検討した。本研究を通して、集団誹謗の概念等に基づく法規制の導入の困難さを確認したほか、アメリカ連邦最高裁の憎悪表現規制違憲判決として知られるRAV判決の法廷意見の形成には複雑な経緯があったものの先例としての地位は維持されることを確認した。また、カナダの人権法による憎悪表現規制が廃止された経緯も検証した。さらに、日本における憎悪表現規制に関する論点の検証も行い、アメリカの議論を概ね準用しうることを確認した。
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