研究課題/領域番号 |
23730023
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
井上 武史 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (40432405)
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キーワード | 公法学 / 憲法 / 結社の自由 / 非営利法人 / 公益法人 |
研究概要 |
本研究課題の全体構想は、憲法上の結社の自由の観点から非営利団体法制を再構成し、わが国において「結社法」「非営利団体法」という新たな法領域を開拓することにあるが、平成24年度は、上記全体構想の一部を構成する次の2点について研究を進めた。 第1は、フランス非営利団体の基本法である1901年法に関する近時の改正の内容とその意義を解明することである。平成25年度では、同改正が制定後100年以上手つかずだった規定の変更をもたらすものであるが、簡便な手続きでの非営利団体の制定、および個人主義原理を徹底という制定当初の理念を実現する方向での改正であること、さらに従来の判例法理の成文法化という側面を含んでいることを明らかにした。 第2は、フランス憲法裁判制度のあり方とその理論的根拠の解明である。2008年憲法改正により、フランスで初めて事後審査制が導入されたが、平成25年度では、人権論の観点から、この制度改正が結社の自由を含む憲法上の権利の保障にどのような影響を及ぼすかを考察した。同成果は、「憲法裁判の正当性と民主主義の観念:フランス憲法理論を手がかりに」曽我部真裕・赤坂幸一編著『憲法改革の理論と展開 大石眞先生還暦記念論文集』(信山社、2012年)135~168頁、「フランスにおける事後審査制導入の影響:通常裁判所の法解釈に対する違憲審査」岡山大学法学会雑誌62巻1号59~81頁(2012年)で公表することができた。また、同制度施行後の憲法院判例の動向については、「主要なQPC判決の概観」辻村みよ子編集代表『フランスの憲法判例II』(信山社、2013年)308~313頁でその概観を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成24年度はフランス非営利団体制度における補助金制度・課税制度の検討を行う予定であった。しかし、上記「研究実績の概要」で示した通り、この間、フランス非営利団体の基本法である1901年法が改正されたこと、また、新たな憲法訴訟制度の施行が行われたことなど、当初の研究を遂行する上での重要な事情変更があったと認識し、そのフォローとキャッチアップを行うことが先決であると考えた。こうした事態は予期せぬものであったが、「研究実施計画」で事前に対処方法を示していた通り、当該分野の専門家から随時、適切な知識の提供を受けることができた。 上記のとおり、当初の計画からは若干遅れることになったが、何れも今後当初の全体構想を遂行するうえでは避けて通れない問題であり、むしろ、早い段階でその問題に対処できたことは全体の研究実施計画の遂行という点からは、有意義であったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、まず24年度に積み残した課題を遂行すべく、フランス非営利団体制度の補助金・課税制度の分析・検討に取り掛かる。そのうえで、比較法研究で得られた視座と論点から日本法を分析する作業を行い、日本における結社法体系の構築を目指したい。その際、すでに体系化が行われているフランスの議論を参考にするべく、MESCHERIAKOFF et al., Droit des associations(1996)、およびK. Rodriguez, Le droit des associations(2004)を参照し、結社法の適切な体系化の方法や項目の望ましい配列のあり方を考究することにしたい。 また、日本法の検討にあたっては、2006年の公益法人制度改革後に生じた運用上の問題も視野に入れることで、内容の一層の充実を図りたいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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