研究課題/領域番号 |
23730026
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村西 良太 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (10452806)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 議会留保 / 外交権 / EU / 欧州債務危機 / 多国間安全保障 |
研究概要 |
申請者の比較研究対象国・ドイツにおいては、このところ重要な政策決定が国際的な舞台へ移行するなかで、議会権限の空洞化が深刻な課題として議論されている。なかでも連邦憲法裁判所は、かかる議会の権限喪失に歯止めをかけるべく、超国家的な政策形成における議会権限の強化を志向しているようにみえる。その典型例と言ってよいのが、連邦国防軍の海外派兵に関わる一連の判決である。そこでは、多国間安全保障の枠組みに沿って連邦国防軍の兵士を海外に派遣する場合に、連邦議会の事前の承認を求めるべきかどうかが争われたところ、連邦憲法裁判所はこれを正面から肯定している。他方、同様の判示傾向は、欧州債務危機への対応をめぐる近時の判決にも看取されうる。財政上の危機に瀕するユーロ加盟国に対して、同加盟国間の取り決めに従って国庫から資金を醵出する場合、連邦議会の承認はどこまで必要とされるかが本件の争点であった。連邦憲法裁判所はここでも、連邦議会の関与を憲法上の要請として肯定している。以上をまとめるならば、国際的な安全保障も、欧州の統合も、いずれも基本法が容認する事象でありながら、そこでの議会権限の維持(というより強化)もまた基本法の要請として強調されてきたと言えるだろう。このような連邦憲法裁判所の基本的な姿勢は、2009年のいわゆる「リスボン判決」にすでに顕れている。ただ、議会権限の強化を求める理由づけに着目するならば、国防軍の域外派兵の場合と、ユーロ危機への対応の場合とでは、その行論が同一でないようにも思われる。今後はそうした細かな分析を進めることによって、グローバルな政策決定における議会の役割とその理論的な根拠を明らかにしたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在進行形の事象を追いかけていることもあり、文献の蒐集が思うようには進んでいない(たとえば注目すべき判決が下された後、一定期間が経過しなければ、評釈等が公刊されない)。また、最終的な論文の構想も、現時点では不明確なままである。
|
今後の研究の推進方策 |
欧州の債務危機が深刻化するなかで、ドイツでは、国際的な平面における政策決定(たとえば資金拠出決定)のあり方、なかでも議会関与の範囲と強度が活発な議論を巻き起こしている。この点に関する重要な論稿は、むしろこれから本格的に刊行されると思われるので、そうした最新文献の研究に注力したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究計画にかんがみて、次年度は、新しく刊行される書籍(雑誌を含む)の購入に大半の研究費を充てるつもりである。
|