研究課題/領域番号 |
23730026
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
村西 良太 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (10452806)
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キーワード | 議会留保 / 外交権 / 欧州連合(EU) / 欧州債務危機 / 多国間安全保障 |
研究概要 |
前年度から引き続き、<グローバルな政策決定と議会留保>に関するドイツ公法学の最新の議論を追いかけた。とりわけ欧州債務危機を契機とする議論が、本研究に重要な素材を提供することとなった。ユーロ通貨危機を抑止すべく、ユーロ圏加盟国が共同で債務過重国に対する緊急融資の枠組みを設けたところ、かかる融資制度の創設および運用にあたって各国の議会をどれだけ関与させるべきかが、論争の的となった。殊にドイツにおいて、この問題は重大な議論を巻き起こし、連邦憲法裁判所は再三にわたって実に注目すべき判断を下している。平成23年度は判決の言い渡しからまだ時間が経過しておらず、文献の収集にも限界があったのに対して、平成24年度にはこれらの判決の評価をめぐって学界の議論も大きな盛り上がりをみせ、それらの収集と分析に注力することができた。その結果、(1)上述の国際的な融資決定に際しては、きわめて強力な議会関与を求めるのが連邦憲法裁判所の一貫した要請であり、学説もおおむねこれを支持していること、(2)その基底には議会の予算権限を重視する視点が垣間見えること、すなわち上述の融資決定は財政上の重大な決定に他ならず、そうであるからには財政権限の一次的な主体である議会の関与が憲法上不可欠と考えられていること、以上二点を確認することができた。これと同様の図式は、国際的安全保障の平面にも看取される。多国間安全保障システムの下でドイツ連邦国防軍(の兵士)を海外に派遣する場合、当該決定に議会の承認は必要か否かの問題がそれである。両者の異同を明らかにする作業に着手したところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本件課題の遂行にとってきわめて重要な判決(ドイツ連邦憲法裁判所)が、平成23年から平成24年の初頭にかけて立て続けに下されたところ、これを契機として、議会留保をめぐるドイツ公法学界の議論が大きな盛り上がりをみせた。そうした重要文献の収集と分析がほぼ計画どおりに進んだこともあり、近日中に研究成果の一部を公表できる見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
議会留保の外にも、たとえば「議会における審議手続き」「本会議と委員会との間の権限配分」が、政策決定のグローバル化にともなっていかなる変容をこうむるか、考察対象をさらに拡げたいと考えている。また、研究成果の公表にも積極的に取り組みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は(前年度までとは異なり)ドイツへの渡航を計画している。具体的な訪問地はベルリン。フンボルト大学および政府機関を訪ね、現在進行形の議論を聴取する予定である。このインタビューは、本研究の総仕上げにとって必須である。
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