本研究は、裁判所「以外」の政治部門(議会と執行府)の憲法解釈とそのあり方について、比較憲法的な見地から検討を行い、多元的な解釈主体によって構築される動態的な憲法秩序のあり様を明らかにするとともに、その規範的意義の検討を目的としている。平成24年度の研究実績は次のとおりである。 (1)アメリカにおいて、議会の憲法解釈を含む立法に関わる様々な調査を行う議会図書館議会調査(Congressional Research Service)の組織と役割について調査した。 (2)日本において、裁判所の違憲審査権の行使の局面だけでなく、政治部門の憲法解釈もまた憲法保障の役割を果たすことについて、様々な角度から検討した。そして、①透明性の確保(国会論議や会議録の公開、それらが容易に入手できること)、②マス・メディアと表現の自由の確保、③裁判所に向けた議論への偏重から、政治部門に向けた議論構築の必要性、④主権者国民の意識を高めることが、政治部門による憲法保障を機能させるために必要であるとの結論を得た。 (3)日本において、政府の憲法解釈を変更する場合にはどのような方法が可能なのかについて、政府自身が国会論議や答弁書において示した憲法解釈方法論を素材にして、その分析を行った。そして、とりわけ政府見解が「国会における議論の積み重ね」を強調していることを踏まえつつ、「国権の最高機関」である国会を重視するという見地からは、国会論議において繰り返し示された政府見解には、容易には変更できない規範的効力が生じると論じた。
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