研究課題/領域番号 |
23730031
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
福島 涼史 長崎県立大学, 国際情報学部, 講師 (70581221)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 公法学 / 神学 / 公法理論 / 憲法制定権力論 / カール・シュミット |
研究概要 |
23年度は、大別して、国家論と神学の分野において研究を行った。1)国家論分野 「研究実施計画」に従って、博士論文をさらに敷衍し、神学者フランシスコ・ビトリアの人道的介入論を鍵として、憲法制定の前提的理論である社会契約論との関連をもつ、国家と人間(個人)の二元論を扱った。その内容は、現代的な概念である「人間の安全保障」を国際連合(国連開発計画等)の文書を通じて見直しつつ、それが人道的介入の法理となった場合の帰結を古典的な人道的介入論との連続性・非連続性とともに論じたものである。その成果は、論文「『人間の安全保障』概念の国家論へのインパクト―国家と人間の二元論に対して―」として公表している。2)神学分野 「研究実施計画」に従って、憲法制定権力論の基礎となる神学の理論(創造論、教会制定論)ついて扱い、いわゆる反革命家の理論を理解するための予備的研究を行った。その内容は、主権論が同一化した憲法制定権力と統治権力の区別を、創造論と救済論の区別に重ね・照らして浮き上がらせようとするものである。その中で、ユダヤ神秘主義研究者G・ショーレムにおけるその区分の没却を指摘しつつ、シーエス、シュミット、ドノソらの憲法制定権力論の様態(型)を浮かび上がらせた。これを「世界創造論と憲法制定権力論―アウグスティヌス、シーエスからショーレムまで―」というタイトルで、研究報告した(12月、京都大学)。 これら研究は、その素材からして、「研究目的」に示した「神学系譜の公法理論の意義と限界の提示」を果たすものである。また、ホッブズ以来の国家論を、あるいは定説とされているユダヤ教の創造論を再構成するという意味において「歴史と理論を省みる新しい視座を与えるものである」。さらに、国際連合を中心とした国際社会、及び、日本の「現代的な要請に応えようとする」点において重要性をもつ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
円高(ドル・ユーロ安)を背景に豊富にヨーロッパ、アメリカより書籍を購入することができ、資料収集がまずもって進んでいる。多くの研究者と討論する機会を得たため、、研究内容の確定も計画どおりといえる。 一方で、公表の準備については、原稿、及び、公表媒体の模索の双方について、課題が残っている。
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今後の研究の推進方策 |
「ドイツ公法学における『ケルゼン・ルネッサンス』の検討」(基盤研究(B)(一般))の研究分担者の一人になったために、こちらの研究から得られるものを最大限活用する。特に、ドイツ渡航・大学訪問の調整・手配に対して、その代表者・研究分担者より協力を得る。 a) 「カール・シュミットの秩序論―完成論に支えられた憲法基礎づけ論」、及び、「憲法のratio―カール・シュミットの単位思考―」の、憲法制定権力(ワイマール憲法)に関する部分をさらに敷衍しつつ、ハンス・ケルゼン、ルドルフ・スメント、ヘルマン・ヘラーらが神学・教会論系譜の制定権力論に対してとった立場について原稿をまとめる。その際は、別科研分担の途中経過を盛り込み、シーエスの理論に対して、それぞれがどのような位置関係にあるかを明確化する。 b)純粋法学を鍵として、日本でも受容され、また常に注目されるケルゼンの理論が、憲法制定権力(論)を否認するものであることに留意しつつ、日本において受容された憲法制定権力論の所について再確認する。その際は、シーエスとの連関を中心に扱う。 c)憲法制定権力論と憲法改正論との関係についての上に挙げた2つのパターンを再確認しつつ、ワイマール期の公法理論について、いかに類型化できるかを探り、b)とともに原稿にまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画どおり以下のとおり。公法(国際法・憲法)関係図書。研究会への参加・資料収集のための関西・関東方面の大学への旅費。ドイツ(フライブルク大学)への渡航、及びドイツ国内の移動・滞在費―翻訳協力に対する謝金については、協力者の都合で、24年度に執行予定。
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