研究課題/領域番号 |
23730039
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
藤澤 尚江 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 准教授 (60533750)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際私法 / 動産担保 / 国際私法 / イギリス / オーストラリア |
研究概要 |
本研究の目的は、グローバルな市場からの資金調達を容易にするため、英国法・オーストラリア法との比較検討を行うことで、企業が有する動産を活用した資金調達において生じる国際私法の問題(渉外的な私法関係にいずれの法域の法を適用すべきか)の解決に取り組むことにある。本研究は具体的に次を予定する。第一に、動産に対する約定担保権に関し、(1)オーストラリアの2009年動産担保法、(2)英国の2006年会社法のそれぞれに関し、なぜ日本の国際私法とは異なり、物の所在地法に従うルールを徹底しなかったのか、実質法のルールを踏まえながら明らかにする。特に(1)のオーストラリアの2009年動産担保法に関しては、国連商取引法委員会(UNCITRAL)の担保取引に関する立法ガイドが与えた影響についても検討を行う。第二に、(1)のオーストラリア、(2)の英国、そして応募者がこれまで研究してきた米国UCCとの比較を行い、実質法上の各国制度の違いを考慮しながら、動産担保取引におけるわが国国際私法のあるべき姿を探る。平成23年度は特に、(1)のオーストラリアの2009年動産担保法に関して、文献による調査研究を進めた。また、関連する研究会に出席することで、研究者や実務家らとの意見交換を行い、自らの認識・理解を深めることができた。平成24年度に主として研究を予定している、(2)の英国法についても、一定程度の資料収集・分析を進め、米国商事取引法典に関する資料のアップデートも行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画では、平成23年度中に文献・資料等から発見された問題点・疑問点の解消と資料の補充のため、休業期間を利用してオーストラリアでのインタビューまたは学会・シンポジウム等への参加による情報収集および資料収集を行う予定であった。しかし、訪問先として予定していたオーストラリアの研究者が、2012年2月に所属大学を変更し、多忙を極めたため、訪問を平成24年度に延期した。平成23年度の実支出額が、予定より少ないのはこのためである。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は次を予定する。(1)平成23年度に実施できなかった、オーストラリアでの情報収集を行う。(2)平成23 年度からの継続事項として次を予定する。;(i) より本格的な英国の資料を収集、分析、(ii) 関連する研究会への参加、意見交換・調査研究、(iii) 米国UCC関連資料とオーストラリア関連資料のアップデート。(3) 英国での情報収集;文献・資料等から発見された問題点・疑問点の解消と資料の補充のため、英国でのインタビューまたはシンポジウム・学会等への参加による情報収集および資料収集とを行う。(4)研究会報告;英国についての調査により得られた成果をまとめ、関連する研究会で報告を行う。研究会で得られるであろう指摘により、問題点をより明確にすることを目的とする。(5)各国の比較による国際私法規則の考慮;オーストラリア・英国に関する調査研究をまとめ、応募者がこれまで研究してきた米国UCCとともに、動産に対する約定担保権の国際私法規則とその規則がとられた背景とについて比較を行う。各国実質法の差異を分析して単位法律関係を設定し、動産約定担保権に関する準拠法について、現在の動産担保融資における担保の役割を考慮しながら、英・豪・米の3カ国の国際私法規則が、物の所在地法から離れた規則を置いた理由に共通のものがあるのかを検討する。そして、従来の物の所在地法の原則を維持すべきか否か、日本の国際私法のあるべき姿を探る。(6)論文執筆;本研究の成果をまとめ、年度内に論文を完成させる。完成した論文は、専門誌・応募者の所属する研究機関紀要等に公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
・ 上述のとおり、平成23年度に予定していたオーストラリアでの情報収集を、訪問先の都合で平成24年度に延期した。従って、収支状況報告書の次年度使用額分は、オーストラリアでの情報収集のための費用にあてる。・その他の研究費の使用計画に関しては、当初予定のとおりである。
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