研究課題/領域番号 |
23730040
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川島 聡 東京大学, 経済学研究科(研究院), その他 (60447620)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 国際人権法 / 合理的配慮 / 差別 / 障害者権利条約 / 障害学 |
研究概要 |
本研究は、「障害学」の視点と知見を踏まえ、障害者権利条約と他の主要人権条約を素材にして、国際人権法における合理的配慮の機能と限界を明らかにすることを目的とする。このような本研究の目的に照らして、平成23年度は、たとえば次のような研究を実施した。 まず、障害者権利条約に定める合理的配慮の概念は、そもそも英米その他の国内法制度での合理的配慮の概念を基礎としている。そのため、本研究の目的を達成する上で国内法の合理的配慮の概念の検討は重要となる。その検討の一環として、私は「英国平等法における障害差別禁止と日本への示唆」と題する論文を執筆した。 また、シラキューズ大学で開催された「ディスアビリティ・エコノミクス」に題する国際会議では、松井彰彦教授と共同で、'Anti-discrimination and Disability Employment Quota in Japan'と題する報告を行った。この報告では、合理的配慮の実効性を確保するという観点から、障害差別禁止法と割当雇用制度との関係を検討した。その検討に際し、割当雇用制度が"responsibility-based approach"と"paradigm of employer initiatives"を採用するのに対し、障害差別禁止法は"rights-based approach"と"paradigm of persons with disabilities initiatives"を採用する、という分析枠組を設けた。 以上は、本研究の目的に資する研究成果である。そして、この研究成果は、国際人権法学の差別禁止概念の理論的発展にも貢献しうるであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、上記の「研究実績の概要」で述べたように、障害者権利条約と他の主要人権条約を素材にして、国際人権法における合理的配慮の機能と限界を明らかにすることである。この目的の実現という観点に照らすと、平成23年度の研究は、平成24年度の研究につながる知見を得られたという意味で、おおむね順調な成果が得られたと思われる。私は、平成23年度に公表した論文で、英国平等法における合理的調整義務の概念を明らかにした。この知見は、障害者権利条約の合理的配慮の性格を明らかにする際の新しい手がかりになりうると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
上記の「研究実績の概要」で述べたように、私は、シラキューズ大学(ニューヨーク)で開催された「ディスアビリティ・エコノミクス」に題する国際会議で、松井彰彦教授と共同で、'Anti-discrimination and Disability Employment Quota in Japan'と題する報告を行ったが、その際に、英語の論文草稿が用意されていた。この草稿を練り直して、平成24年度に論文を応募することを検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究代表者が関連文献を収集し、解読して、論文を執筆し、それを公表する場合に最低限必要な経費として、平成24年度の研究費の使用計画は、以下を予定している。障害学、差別禁止法、国際人権法の関連文献は毎年重要なものが多数刊行されている。しかも、それらは高額なものが多い。そのため、書籍・資料費として27 万円を計上する。また、各種文具・論文別刷の費用として2 万円を計上した。本研究の成果の一部を、英語の論文として公表するため、その校閲(ネイティブ・チェック)のための謝金として6 万円を計上した。東京大学に所蔵されていない資料文献や、既に市販されていない資料文献を、他大学から本学図書館経由で借出する資料文献収集費として、2 万円を計上した。資料の印刷費・複写費は、2 万円を計上した。以上をまとめると、平成24年度の研究費は、合計39 万円である。
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