研究課題/領域番号 |
23730047
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
岡松 暁子 法政大学, 人間環境学部, 准教授 (40391081)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 北極海 / 船舶起因汚染 / 排他的経済水域 / 国連海洋法条約 |
研究概要 |
船舶起因汚染は、伝統的に公海自由原則の下、旗国主義によって規制されてきた。しかし、北極海においては旗国主義による規制の限界から、カナダが、国内雹により厳格な基準を設定し、これを沿岸100海里にまで一方的に適用して外国船舶をも規制しようとしたため、米国を始めとする各国と激しく対立した。その後、国連海洋法条約を始めとする国際的取組が進展したが、実際には、現在でも以下のような諸規制とその解釈が複雑に錯綜している状況にある。 まず、国連海洋法条約は、沿岸国による船舶起因汚染の防止措置について、国際基準に基づく法令制定権や、場合によっては、それ以上に厳しい内容の法令制定権を規定している。しかし、これらの規定の適用には厳格な手続的要件を満たす必要があるため、カナダは、より緩やかな要件での規制が認められる「氷に覆われた水域」規定を主張し、その国連海洋法条約への挿入に成功した(第234条)。さらに条約発効後は、本条にその根拠を置きながら、国内法の適用範囲の200海里への拡大、通航の際の事前通告の義務化等、一層の規制強化を図る実行を重ねている。対して、米国は、当該水域を「国際海峡」であると主張している。 2011年度は、このように航行可能水域の拡大により、沿岸国に認められている汚染防止のための管轄権の対象や範囲が広がるという、従来の規制枠組の変化と対立の深刻化が見られる点につき、上述のようなアメリカとカナダとの対立を踏まえて検討を行い、国際法学会春季研究大会において、研究報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、北極海における海洋環境問題のうち、船舶起因汚染について、学術学会において研究報告を行うことができた。また、研究会での専門家との意見交換、また、国際海洋法裁判所での、判事との意見交換等を行い、今後の研究への貴重な助言を得ることができた。 研究成果を活字にする必要があり、この点が次年度への課題として残った。 以上の理由から、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の船舶起因汚染に関する論文の公表を含め、最終的な取りまとめを行う。学会や研究会等で口頭発表を行い、そこでの研究者からのコメントを反映させた上で、論文にまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
8月にブルガリアで開催される国際法協会世界大会にて、北極海に関するセッションが行われるため、それに出席し、最新の研究動向についての知見を得る。 また、必要な書籍の購入、学会報告のための出張費等の支出が予定されている。
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