冷戦終結以前の国際法学において国際法や国際組織の正当性・正統性の議論は活発ではなかった。理由として、伝統的国際法が国家間合意にその正当性根拠を求めたことなどが挙げられる。ゆえに、合法性・正当性(legality)と正統性(legitimacy)の区別も自明ではない。しかし、国際法の保護法益が主権国家間の調整から人権保障へと機能を変化させていくと同時に合法性と対置される形での正統性の存在意義が明確化する。国際刑事裁判も人道主義を背景に設置の違法性が疑われても正統なものであると主張されてきた。本研究では、正統性の内容を民主的正統性、手続的正統性、実質的正統性に区別し、指標の明確化と評価に努めた。
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