研究期間において、日本法・ドイツ法・アメリカ法を主な題材として、過去の差別が現在に効果をもたらしている場合の是正の法理について研究を行った。 各国において、差別禁止法は「行為」としての差別(作為)を主な対象として想定している。これに対し、既に歴史的な経緯から存在に至っている、「状態」としての差別(過去の差別)は、作為が介在しないもの(不作為)も多く、意識されない、差別禁止法の直接の射程に入り難い等の理由から、是正が困難である。 上記のような「状態」としての差別の典型的な例は、たとえば、過去、差別が適法だったときに形成された職務慣行(男性労働者に適した長時間労働等)、職位(男性労働者等の多数派が管理職等のポジションを占有)、それらの職位の相違や過去の査定に基づく賃金差別などである。 これらの過去の差別の是正手段として、賃金差別やセクシュアル・ハラスメント等の「状態」を射程とできる差別としての構成、間接差別法理、ポジティブ・アクション等がみられる。
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