研究課題/領域番号 |
23730056
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
池田 千鶴 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40346276)
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キーワード | イノベーション / FRAND宣言付き標準必須特許 / 企業結合規制 / 特許権保有者の移転 / 排除戦略 / 事前規制と事後規制 |
研究概要 |
本年度は、FRAND宣言付きの標準必須特許を含む膨大な特許ポートフォーリオの取得を目的とした、スマートフォンやタブレットなどの無線端末産業における企業結合審査事例をとりあげ、FRAND宣言付き標準必須特許の特許権保有者が移転される場合(特許権の譲渡により権利者が法的に変更される場合のみならず、株式取得による完全子会社化を通じて、実質的な権利行使主体が変更される場合も含む)に生じる競争上の懸念について検討した。 Google/Motorola Mobility、CPTN/Novell、Apple/Novell、Rockstr Bidco/Nortelの欧米競争当局による審査事例を取り上げ、FRAND宣言の内容の曖昧さを利用して合併後にライバルをホールドアップする能力とインセンティブを合併企業がもち、イノベーションや競争を妨げることとなるかという主な競争上の懸念について、分析した。 その際には、合併後に懸念される反競争的行動が行われる前に、事前に、問題解消措置等の方法で対応する企業結合規制(特許取得時に行う事前規制)だけでなく、反競争的行動が行われたあとに、事後的に、市場支配的地位の濫用規制(日本の私的独占規制に相当する規制)で対応する視点も、上記の事例分析を行う上で取り入れた。 来年度は、2つ以上の顧客を媒介し、間接のネットワーク効果が働く、インターネット上におけるプラットーフォームビジネスに関する企業結合審査上で配慮すべき点を検討するべく、海外競争当局の審査事例を検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
欧米の競争当局が企業結合審査結果やその概要をそれぞれのホームページに掲載しており、一次資料へのアクセスがしやすいので、本研究に関する具体的な事例を収集しやすいことが本研究の目的を達成するための重要な要素として挙げられる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度にあたる来年度は、これまでの研究成果を踏まえつつ、さらに実務上の関心の高いテーマを研究していく予定である。 来年度は、2つ以上の顧客を媒介し、間接のネットワーク効果が働く、インターネット上におけるプラットーフォームビジネスに関する企業結合審査上で配慮すべき点を検討するべく、海外競争当局の審査事例を検討する予定である。公正取引委員会の競争政策センターにおける研究プロジェクトのメンバーとしても他の経済学者・法学者、公取委職員らと共同研究を行う予定であり、一層の研究の推進が見込まれる。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入を予定していた洋書の刊行が遅れたため。 平成26年度中には刊行される予定である。
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