研究課題/領域番号 |
23730057
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
細谷 越史 香川大学, 法務研究科, 准教授 (60368389)
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キーワード | 労働者の損害賠償責任 |
研究概要 |
本研究は、近年の雇用慣行の変化の下で重要性を増す、労働者が過失などにより企業に損害を与えた場合に使用者が採り得るサンクション(制裁)に対する規制のあり方を日本とドイツの比較法の観点から明らかにしようとするものである。 本年度においては、労働者の損害賠償責任の制限法理の研究をさらに発展させながら、それを基礎として、研究対象を隣接するサンクションである普通解雇、懲戒解雇、退職金の減額等に拡大してきた。 また、その際に、これに付随する問題として就業規則法理の研究なども同時に進め、その研究などをふまえて、細谷越史「労働基準法:第12章 雑則」西谷敏・野田進・和田肇編『新基本コンメンタール 労働基準法・労働契約法』(2012年10月、日本評論社)287-293頁の形で執筆することができた。 さらに、本年度における日独の比較法研究を遂行するために、ドイツにおいて比較的長期の研究滞在を行い、包括的で体系的な独文資料の調査・収集と、ドイツの研究者を中心として意見交換を行い、また情報提供を依頼するなどした。 こうしたドイツでの調査や資料収集などをふまえて、ドイツの労働者の責任制限法理の理解をさらに深め、これまでの労働者の責任制限法理に関する研究をいっそう発展させ、香川大学法学会研究会で報告・討論し、また、平成23年度に実施した研究内容を加筆したうえで、労働者の責任制限法理の研究の集大成として、細谷越史『労働者の損害賠償責任』(香川大学法学会叢書No.9)(2013年発表予定、成文堂)1-210頁(予定)を執筆し、脱稿することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はおおむね順調に進展している。 とりわけ、ドイツにおける研究滞在においては、これまで学術交流を行ってきた研究者らを中心として、聞き取り調査や資料収集の際に積極的に多大な協力が得られていることから、ドイツにおける損害賠償請求、解雇、違約罰、懲戒処分などに関する研究をおおむね順調に進めることが可能となっている。 なお、ドイツにおける研究滞在中に日本の文献などを収集することには一定の困難が伴うため、日本法の研究が若干遅れるきらいがあったが、次年度にはこのような技術的な課題をうまく克服できるよう努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度には、平成24年度に引き続き、主として、日独の解雇法の研究を本格的に進展させ、また、留学・研修費用の返還制度についての比較法研究にも着手することにしたい。 まず、労働者の過失行為および勤務成績・労務給付の不良を理由とする普通解雇の法理については、日本法について、細谷越史「労働者の非違行為等の事例に関する解雇規制の再検討」『西谷敏先生古稀記念論文集』(2013年出版予定、日本評論社)所収として発表することにする。また、平成24年度のドイツでの研究滞在などを経て、ドイツ解雇法を詳細に分析し理解を深めたうえで、日本の解雇法との比較の視点から、ドイツの行為・態度を理由とする解雇の制限法理についての論文を公表する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度においても、一定期間ドイツでの滞在を継続する予定であるため、その際に必要となる研究費などに研究費を使用させていただく予定である。 この他、ドイツおよび日本の研究書や雑誌等の購入費用、出張費用などに研究費を充てることを予定している。
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