本研究の目的は,科学的証拠の許容性に関する理論的基礎を解明し,その具体的要件を定立することである。この目的を達成するため,計5か国の比較法研究を行った。 結論として,私は英米の立場を支持し,科学的証拠の信頼性を許容性段階で審査すべきと考える。そして,この許容性段階での審査は,科学的証拠のみならず,非科学的な専門証拠にも及ぼすべきである。なぜなら,事実認定者は専門証拠の信頼性を評価するための知識を十分に持ち合わせてはいないからである。ただし,この信頼性に対する審査は,カナダの立場のように関連性概念の下に包摂することが可能だと考える。日本の関連性概念は,英米の関連性概念よりも広範だからである。
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