刑事立法問題の具体的適用について、新たに制定された不正指令電磁的記録等に関する罪、いわゆるコンピュータ・ウィルスに関する罪を素材として、研究を行い、執筆を行った。そこにおいては、立法の過程に関して、サイバー犯罪条約、経済産業省サイバー刑事法研究会、法務省法制審議会、国会での審議(特に参議院法務委員会)のうち、立法上の考慮に関わる重要事項を整理して記し、かつ立案担当者によって示された各要件の解釈、既存の適用事例に関する研究、生じうる解釈論上の問題の想定を行い、対応しうる要件解釈の提案を行っている。立案担当者の見解から、もう一歩踏み込んだ、流通範囲を設定した議論を可能とする解釈の枠組みが必要であるとの結論を得ている。上記成果は平成26年5月に脱稿した。具体的刊行時期は未定であるが、注釈刑法第2巻(有斐閣)に掲載される予定である。 また、まさに立法が同時進行したものであるが、平成25年度に新たに立法された「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律案」を素材に、交通犯罪の刑事立法について、検討を行った。従来の裁判例・判例理論の集積に検討、および当該立法の際の法制審議会での議論について検討を加え、本立法により生じうる問題点、交通事犯対策として検討すべき問題点の解明に努めた。重要な検討課題として、新規に立法された危険運転致死傷罪の拡張類型(危険運転の拡張と準危険運転致死傷罪)と無免許加重について(特に逆走類型と病気等類型)、その要件解釈から処罰範囲を明確化すべきこと、交通犯罪周辺者(同乗者・酒類提供者等)への処罰拡張の限界設定という2つの課題があり、引き続き研究を進めて、成果を公表したいと考えている。
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