研究の最終年度である平成25年度においては、電子監視を性犯罪者に対して付する場合に焦点をあてることとした。というのも、電子監視の実施のある意味で最も分かりやすい―その本質が出やすい―ものが性犯罪者に対する付加であるからである。この研究のため、2013年9月にカナダの中部から東部にわたり、実態調査及び文献の収集のため、長めの調査を行った。そして、この調査によって得られた知見を、10月に行われた犯罪社会学会第40回大会でのテーマセッションにて報告することとなった(この内容については、同学会の報告要旨に記載されている)。報告テーマは「性犯罪者に対するサンクション―GPS型電子監視、居住制限、登録・通知制度」というものであり、タイトルとはうらはらに、サンクションではなく、性犯罪者に対する処遇―しかも専門家と一般の人との協同によってなされる処遇―を提案するものである。 この報告でもふれたのであるが、性犯罪者にGPSをつけることで再犯率を下げることはできない。そして、昨年度までの研究においてふれたように(甘利航司「『電子監視(Electronic Monitoring)』研究序説」国学院法学50巻4号所収)、在宅拘禁型の電子監視においても再犯率を下げる効果などない。では、電子監視が行っているのは何かというと、「監視されてしかるべき人」という劣位におかれた人に対する「監視」なのである。それは、対象者を社会内で包摂するためのものでも、処遇理念に根差したものでも、現実的な拘禁代替策でも、全くない。このような帰結は、文献だけから得られたものではなく、むしろ、諸外国での実態調査から得られたものである。以上のような内容を最終年度の最後のまとめとして、甘利航司「性犯罪者に対するサンクション―GPS型電子監視、居住制限そして登録・通知制度」国学院法学51巻4号19頁以下にて詳らかにした。
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