日本では、薬物乱用防止五か年戦略が1998年に策定されて以来、2003年には新薬物乱用防止五か年戦略、2008年には第三次薬物乱用防止五か年戦略、そして2013年には第四次薬物乱用防止五か年戦略(四次戦略)がそれぞれ策定されている。いずれの戦略においても、違法薬物の供給側と需要側への取組みを分け、徹底した取締りを強化することが掲げられ行動に移されているが、薬物依存症をケアするという姿勢を見ることは困難であった。 一方で、三次戦略および四次戦略では、これまでの戦略よりも、少しずつではあるが再乱用防止に向けた医療的・福祉的な薬物依存症対策を示すようになってきた。しかし、まだ医療的・福祉的支援については不十分であるために、より一層の早期に介入された司法・医療・福祉のバランスが取れた薬物政策が目指されることとなった。今なお社会的受け皿の問題等の指摘が残されているが、日本は刑の一部の執行猶予制度が導入されるなど、より「治療的」で、より「福祉的」な制度へと変化する時期であると言える。 以上のような問題背景の中、報告者は、アメリカの薬物専門裁判所(ドラッグ・コート)を中心に日本以外の薬物政策を調査し、司法・医療・福祉のつながりによって従来の厳罰のみを用いる政策とは異なる方法があるのではないかと思案し、本研究を行った。 最終年度にあたる25年度は、ドラッグ・コート専門家会議への参加の他に、DPAが主催するDrug Policy Reformの国際大会にも参加し、近年大きな動きを見せているアメリカのソフトドラッグの合法化政策の議論や問題点を考察することができた。 最終年度の関連業績としては、学会報告を2本と投稿論文を1本、研究ノートを1本公表した(詳細は業績を参照)。
|