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2011 年度 実施状況報告書

不法行為法における被害者像―注意義務及び注意水準との関係において

研究課題

研究課題/領域番号 23730078
研究機関北海道大学

研究代表者

永下 泰之  北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 助教 (20543515)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード民法 / 不法行為 / 素因
研究概要

わが国では、身体又は精神的に虚弱な者に対して損害を与えた者は、損害賠償責任を免れないが、被害者の虚弱性(素因)を理由として賠償額が適宜減額されうるという判例法理(素因斟酌という)が確立しているところ、素因斟酌の可否が論ぜられてきた。そこでは、被害者側からの立論が多く見られる。しかし、なぜ被害者の素因の影響した部分についてまで加害者は責任を追うのか、責任を免れるためには加害者はいかに振舞うべきかという加害者側から見た責任の当否については、未だ十分に明らかにされていないように思われる。 そこで平成23年度は、加害者と被害者の人的関係性の密度という観点から、主に労災事件の裁判例の検討を行った。その際には、特に、被害者たる被用者の素因の斟酌を否定した電通過労死事件(最高裁平成12年3月24日判決)を中心として分析を試みた。電通過労死事件においては、使用者の責任が認定され、かつ、被害者の素因を斟酌することはできないとの判断がなされたのであるが、注意義務・注意水準に着目するならば、使用者はその被用者の素因についてまで注意義務が及ぶと理解することができる。しかし、さらに本研究から明らかになったのは、加害者たる使用者は何故にそれほどの注意義務を負担せねばならないかは必ずしも自明ではないという点である。この点については、今後の研究において解明を試みる。 また平成23年度の研究は、わが国の分析とともに、ドイツ法の分析も並行して行なってきた。ドイツ法では、被害者の素因を斟酌することはできないとする命題が確立しており、同命題の再確認を行った。同命題については、その規範的意義の他に、訴訟上の立証責任・証明度の問題が介在してくることが明らかとなった。この点につき、ドイツの不法行為法研究者(ハーガー教授(ミュンヘン大学))にインタビューを行った。その成果は、今後の研究において明らかにする予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成23年度の研究は、交付申請書記載の研究計画に従い、順調に遂行されている。特に、本研究において重要であった、ドイツにおける不法行為法学者へのインタビューも行っており、本研究にとって有意義な議論を交わすことができた。 平成23年度の研究成果は、すでに一部公表済みであり、また残部も順次公表できる態勢にある。

今後の研究の推進方策

今後としては、まず平成23年度の研究の成果をまとめる予定である。 次いで、別の視点からの研究にシフトする。平成23年度の研究から明らかになったように、加害者は何故にそれほどの注意義務を負担せねばならないかは必ずしも自明ではない。この点については、その規範的評価が重要であるが、本研究はその際に、被害者・加害者の行動の最適抑止という観点からも分析を試みることとしている。よって、今後の研究としては、法の経済分析(法と経済学)の手法を取り入れて、分析を行う予定である。 平成24年度の研究は、法の経済分析(法と経済学)の観点からの研究となる。前年度の比較法研究は、ドイツ法が中心であったが、法の経済分析(法と経済学)の研究は、アメリカが進んでいるため、新たにアメリカ法の文献・裁判例の収集を行う予定である。 また、本研究の手法・仮説などについて、現在におけるアメリカの研究者(不法行為法並びに法の経済分析)との意見交換のため、アメリカへの研究調査を予定している。

次年度の研究費の使用計画

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  • 研究成果

    (2件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (2件)

  • [雑誌論文] 損害賠償法における素因の位置(2)2012

    • 著者名/発表者名
      永下泰之
    • 雑誌名

      北大法学論集

      巻: 62巻5号 ページ: 1145-1199

  • [雑誌論文] 損害賠償法における素因の位置(1)2011

    • 著者名/発表者名
      永下泰之
    • 雑誌名

      北大法学論集

      巻: 62巻4号 ページ: 671-745

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公開日: 2013-07-10  

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