本研究は、不法行為法における被害者像を析出し、これを基に、加害者及び被害者の注意義務・注意水準の機能的分析及び再設定を試みるものである。わが国では、被害者の心身の脆弱性(素因)が加害行為と競合して損害が生じる場合、賠償額を減額しうるとする法理が判例・学説上認められている。このとき、被害者の脆弱性を考慮するか否かによって、加害者及び被害者に求められる注意義務・注意水準が設定される。従来、加害者の注意義務は被害者を「標準人」として設定されていたところ、本研究は、被害者を「最低限の抵抗力を有する者」と措定し、加害者・被害者の注意義務・注意水準を最適化されることを提言した。
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