研究課題/領域番号 |
23730079
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小野寺 倫子 北海道大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 博士研究員 (10601320)
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キーワード | 民事法学 / 不法行為法 / 環境損害 / 団体訴訟 / フランス民事責任法 |
研究概要 |
平成24年度においては、平成23年度に行ったNeyretのテーズ『生きているものへの侵害と民事責任』の分析やフランスにおいて実施した文献収集、この領域に関して先進的研究を進めている研究者へのインタビュー調査をもとに、純粋環境損害(環境への侵害から環境それ自体に対して生じる損害)の民事責任法の性質に関する理論的分析をさらに進め、その成果を論文にまとめるとともに、所属先研究機関及び外部の研究会において研究報告を行った。 具体的には、まず、本研究に関し、23年度末から北大法学論集に連載中であった論文について、引き続き北大法学論集に投稿・公表した(小野寺倫子「人に帰属しない利益と民事責任―純粋環境損害と損害の属人的性格をめぐるフランス法の議論からの示唆―(2)」北法63巻1号(2012)250[45]-190[105]頁、小野寺倫子「人に帰属しない利益と民事責任―純粋環境損害と損害の属人的性格をめぐるフランス法の議論からの示唆―(3・完)」北法63巻4号(2012)238[95]-175[158]頁)。 また、上記論文の内容を中心に、24年7月20日には、北海道大学民事法研究会において、「環境侵害における私法上の救済の可能性―日本法の議論の現状とフランス法からの示唆」とのタイトルで報告を行った。ついで、24年11月16日には、神戸大学民法判例研究会・科研費研究「集団的利益または集合的利益の保護と救済のあり方に関する解釈論的・立法論的検討」(研究代表者:窪田充見)において、「人に帰属しない利益と民事責任―純粋環境損害の民事救済に関するフランス法の議論を素材として―」というタイトルで報告を行った。さらに、25年2月9日には、科研基盤研究A「財産法の現代化と財産法制の再編」(研究代表者:潮見佳男)において、「フランス法における純粋環境損害の賠償について」とのタイトルで報告を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は、日本法との比較研究を含まない、本研究の中間報告的な論文として位置づけられていた「人に帰属しない利益の侵害と民事責任―純粋環境損害と損害の属人的性格をめぐるフランス法の議論からの示唆―」と題した論文が、執筆の課程で、日本法との比較研究も含む、本研究の中核的な論文に発展した。さらに予定よりも半年ほど早く完成し、「北大法学論集」誌上で公刊することができた。 論文が予定よりも規模の大きなものとなったこと及びその完成時期が早まったことに伴い、所属機関内外における研究成果の口頭報告等も予定よりも多く行うことができた。 なお、24年度末(2月ないし3月)に予定していた海外調査は実施しなかったが、これは、23年度に実施した調査の際に想定していた以上の成果があったこと、及び、25年5月25日-26日に環境と契約に関する日仏シンポジウム(@早稲田大学)の開催が計画され、これに参加のため環境損害に関連する研究を行っている研究者が数名来日する予定であり、この機会に情報収集が可能となったためであり、研究の進捗状況に影響を与えるものではない。
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今後の研究の推進方策 |
25年5月に、東京で開催される環境と契約をテーマとする国際シンポジュウムに参加する予定である(フランス人研究者の報告の一つについては通訳を担当する予定である。これに関し、研究会終了後には翻訳テキストの公表を計画している)。環境私法に関する最先端の研究者が多数参加を予定しており、本研究について示唆を得る機会があると考えられる。 25年9月には、フランス(パリ)で開催される予定の国際シンポジュウム(日仏民法セミナー、シンポジュウムの全体的なテーマは「損害」)において、昨年度本研究の内容を報告する予定である。また、この準備のため、4月、6月、8月に東京で開かれる準備研究会にも参加し、毎回報告を行う予定である。 26年1月には、東京(具体的な会場は未定)において、本研究のまとめとなる研究報告を行うことを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度において、研究費の未使用分が発生したのは、24年2月ないし3月に予定していたフランスでの海外調査を実施しなかったためである。これは、23年度に実施した海外調査の際に想定していた以上の成果があったこと、及び、25年5月25日-26日に日仏環境法シンポジウム(@早稲田大学)の開催が計画され、これに参加するため、本研究に関連する研究を行っているフランス研究者が数名来日する予定となり、この機会に情報収集が可能となったことにより、上記の時期にフランスで調査を行う必要性がなくなったためである。 上記24年度の研究費未使用分については、25年9月にフランス(パリ)で開催される予定の国際シンポジュウム(日仏民法セミナー)において本研究の成果について報告する際のフランスへの渡航・滞在費用として使用する予定である。
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