研究課題/領域番号 |
23730082
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
伊藤 吉洋 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 助教 (50582897)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | アメリカ |
研究概要 |
平成23年度の研究実施計画は、第一に、日本の既出の裁判例ならびにそれに対応した実務および学説に加えて、今後公表されるであろう最新の裁判例等を継続的に分析し、(1)各当事者にとっての、裁判結果についての予測可能性を高めることと(2)二つの効率性の観点との必要性について引き続き確認していくことであった。第二に、アメリカの既出の裁判例について紹介した上で、当該裁判例を批判し、順守するよう要求されるべき手続について二つの効率性の観点から提案を行っているGilson & Gordon、Subramanian等の見解を紹介・考察するとともに、それらの見解と対極にある見解からの批判について紹介・考察することであった。第三に、上述の各見解には、特に、事後的な効率性に対して大きな影響を及ぼしうる情報開示規制についての検討の不十分さという問題点があることを確認し、そのような問題点を補うために、その点に関する州法に加えて、連邦法による規制や学説について調査・考察を行うことであった。第四に、アメリカ特有の法的および社会的状況を確認し、以上の議論に及んでいる黙示的な影響について分析し、日本において行われるべき特別な取り扱いについて検討することであった。 第一の計画に関連しては、日本の最新の裁判例である「サイバード・ホールディングス事件」にかかる判例評釈を公表した。第一乃至第三の計画に関連しては、当年度末に本研究にかかる論考の一部を脱稿したところであり、平成24年度当初にさらに追加的な論考の一部を脱稿する予定である(いずれも平成24年度中公表)。もっとも、第四の計画については、実施が完了しなかったため、引き続き平成24年度にも実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、組織再編等によって支配株主が少数株主を締め出す行為(締め出し取引)について、少数株主が利用する事後的な救済措置において手続的側面を重視した運用を行うべきことを提案するとともに、アメリカの議論を参考にして、事前と事後との二つの効率性の観点から、順守されるべき手続の細部を明らかにした上で、明確な標準を示すことを目的とするものである。それによって、各当事者(支配株主及び少数株主)にとっての、裁判結果についての予測可能性を高め、ひいては、株式会社への望ましいレベルの投資を促進することで、社会全体の効率性を高めることができることが本研究の意義である。 研究実績の概要においても述べたように、アメリカ特有の法的および社会的状況を確認し、以上の議論に及んでいる黙示的な影響について分析し、日本において行われるべき特別な取り扱いについて検討するという作業は完了してはいない。もっとも、全体的にみれば、本研究にかかる論考の3分の2を平成24年度当初までに脱稿できることが見込まれる。したがって、本研究はおおむね順調に進展していると評価しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度においては、平成23年度の研究を踏まえて、総合的に考慮すれば合理的であると評価できるアメリカの議論を用いて、現在も発展し続けている日本の議論(裁判例・学説・実務)を批判的に検討する。その上で、順守するよう要求されるべき手続の細部までを明確にした、我が国への具体的な提案を行う。なお、余力があれば、欧州の状況についても調査し、提案を行いたい。そして、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度においては、特に、平成23年度に引き続き、本研究に関連するシンポジウムや研究会に参加し、また国内外の最新の関連文献を渉猟する等のために研究費を使用する予定である。
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