研究課題/領域番号 |
23730086
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
生駒 俊英 福井大学, 教育地域科学部, 講師 (00514027)
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キーワード | ドイツ |
研究概要 |
本年度、ドイツにおける「年金権調整制度」について、昨年度研究を進めた改正に至った理由・従来の問題点を踏まえて、改正に至る議論、新たに制度導入後に指摘されている問題点について取り組んだ。改正に至る議論については、2003年に設立された“年金権調整制度の構造改革”のための委員会に始まり、政府草案や法律草案に関して、2009年改正法成立までの変遷を整理した。新たな制度の問題点の指摘としては、様々な文献において多くの指摘がなされていたが、以下3つの根本的な弱点が指摘される。一つ目として、年金権調整法はあくまで補助(補完)的なものであり、調整には当該年金保険者の規定を使用するとことなる。それゆえに、個々の年金保険者の複雑な規定に、根本的に取り組まなければならない点である。二つ目として、年金権調整法は、異なった年金制度における権利の調整を放棄しないものであるが、家庭裁判所実務は、簡易に処理し得る調整基準を与えられていない。最後に、年金権調整法は、従来から裁判所において明確にされていない、多くの説明を必要とする法的概念を含んでいる点である(例えば年金権調整法19条2項1号1文の趣旨における“nicht hinreichend verfestigt”)。 我が国の状況に関しても、裁判例・学説を中心として研究を進めた。裁判例については、昨年度に引き続きあらたに数件公表されていた。特に目新しい点はなかったが、離婚事件においては、財産分与と並んで年金の分割が定着してきている。また、平成23年度になされた夫婦財産契約の中に、登記事項として年金分割について記載された登記が存在した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
補助事業期間延長申請にも記載したが育児休暇等の為に、平成24年度予定した研究を全て進める事はできなかった。しかし、予定していたドイツの改正経緯の議論は整理することができ、新制度の指摘される問題点についても一定程度明確にすることができた。現在通常の研究時間を獲得できるようになり、研究を進めている。資料に関しては手元に準備してあり、残り資料の分析、特に現在のドイツにおける制度の運用状況、問題点を明確にする。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年11月に刊行予定の『家族と社会保障をめぐる法的課題―本澤巳代子先生還暦記念論文集―』において、本研究結果を発表することとしている。また、当該執筆にあたっては、8月に執筆者による会議が行われることとなっている。従って、その際には、共同執筆者からも様々な意見を聞き、論文にいかせるようにする。 平成25度は、ドイツの新制度について全体的にではなく、個別的な論点(日本の制度との関係において)に注視して研究を進めていく。研究最終年度でもある為、我が国の今後の制度のあり方について、提案できるように引き続き研究を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費は、書籍代(3万円程)、複写代(1万円程)、学会への参加費(4万円程)へと利用する予定である。
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