研究課題/領域番号 |
23730090
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
飯田 秀総 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (80436500)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 企業買収 / 株式買取請求権 / M&A / 会社法 |
研究概要 |
株式買取請求権の構造及び買取価格算定の考慮要素について、デラウェア州法との比較法による分析、及び、理論・実証の両面からの経済分析を行った。 第1に、実証研究の結果、一般的に、支配会社が従属会社を搾取するような条件で企業買収が行われているとはいえないことが判明した。 第2に、比較法研究の結果、デラウェア州では、株式買取請求権においても、取締役や支配株主に対する損害賠償請求権においても、シナジーのあるべき分配を行うことは可能であるような判例法理が存在するにもかかわらず、実際にシナジーのあるべき分配を行う例はみあたらず、むしろシナジーは分配しないことを明言する裁判例すら存在することが明らかになった。 第3に、学説の理論的な検討の結果、非効率的な組織再編を抑止するというスクリーニング機能の観点から株式買取請求権を理解する方が、株式買取請求権の構造等をよりよく説明できることが明らかになった。 第4に、債務超過会社における無償のフリーズ・アウトを認めるか否かは過小投資の非効率性と過剰投資の非効率性のいずれを重視するかの問題であり、過小投資の非効率性を重視するならば無償でのフリーズ・アウトを認めるべきであり、過剰投資の非効率性を重視するならば債務超過であっても有償でのフリーズ・アウトのみを認めるべき関係にあることが明らかになった。 第5に、株式買取請求権において公開買付けの強圧性の問題に対応しようとするのは無理があるので、本来的には公開買付規制において解決するべきであり、買取価格の算定においてこの問題を考慮する必要は無いが、過渡期的な解釈論として株式買取請求権を利用するのであれば、買取価格を公開買付価格と一致させることが1つの選択肢であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実証研究、比較法、理論研究のいずれについても、多くの課題について解明することができ、そのうちの一部を研究成果として公表することができたから。
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今後の研究の推進方策 |
株式買取請求権に関する研究成果を公表し、世に問うとともに、現在進行中の会社法改正をめぐる議論の進展をも取り込んだ研究を行うこととする。解釈論・立法論の両面からの提言を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用予定の研究費が生じたのは、東日本大震災に伴い、研究費の交付が全額行われるか不透明だったため、必要なデータベースや書籍等の購入が遅れたためである。 翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画としては、会社法関連の書籍の購入を中心に使用するとともに、研究成果の公表のための旅費や、必要な文房具等の購入に使用する。
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