研究課題/領域番号 |
23730093
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
濱田 陽子 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (50368586)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 拡散的権利 |
研究概要 |
本研究の最終的な目的は、費用対効果等の点から各権利者による個別の権利行使が事実上期待できないとされている、いわゆる拡散的権利を有する者が、その適正かつ実効的な実現を求めて自ら私法にアクセスするための民事訴訟手続上の解釈論または立法論を提示することである。平成23年度には、拡散的権利の保護についてこれまで公表された先行研究を分析するとともに、現在進行中の集合的消費者被害回復制度の動向に注目し、その問題点について考察した。1.先行研究の分析について 拡散的権利の集合的救済制度について、消費者保護や市場調整を目的として手続の創設を主張する議論が多いが、現行の司法制度における問題点の分析や、消費者各個人の権利行使に後見的役割を担う主体の必要性、民事訴訟手続の市場調整的役割の可能性等について細かな検討まではなされていないようである。手続法分野においても手続創設の趣旨が不鮮明であるために、十分な議論がなされにくい状況にある。2.集合的消費者被害回復制度の動向について 消費者庁を中心に進行中の集合的消費者被害救済制度では、被害防止策については行政的手法を別途考えることとし、民事訴訟は集合的な民事上の被害回復を目的とする制度として、その骨子が公表され意見が募集された。骨子の内容は平成23年度の民事訴訟法学会シンポジウムでも取り上げられ、共通争点という概念の意味や判決の拘束力の範囲など種々の問題点について議論がなされたが、そこでも制度設立の必要性が不明確であることが指摘された。その後、シンポジウムで提示された問題点を考察した研究は多くない。本研究は、権利主体による権利行使の方法に着目することから、制度設立の必要性および有効性にかんする議論に資するものと予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画では、平成23年度には、(1)日本における拡散的権利保護にかんする先行研究の分析、(2)日本で懸念されている問題点と対応策の抽出、(3)アメリカにおける拡散的権利の保護・実現過程についての資料収集が予定されていた。しかし、人的環境の変化によって教育業務の負担割合が予想より大きくなったこともあり、当初に予定していた(3)アメリカ法にかんする資料収集・調査が実現できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度には、平成23年度に実行できなかったアメリカにおける拡散的権利の保護・実現の歴史と現状を調査し、権利主体の手続への関与の程度・方法について分析して、翌年度以降の分析に備える。また、日本における拡散的権利保護にかんする解釈・立法の動きにも、昨年と同様に着目し続ける予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度には、(1)アメリカ法にかんする文献・資料の調達(物品・書籍の購入)、(2)アメリカにおける調査・資料収集(旅費、書籍等の購入、謝金等)、(3)収集した資料の整理・分析(人件費、物品の購入)のために研究費を使用する予定である。
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