【平成27年度(最終年度)の研究の成果】 平成27年度については、知的財産権侵害によって得た侵害者の利益額が知的財産権者の損害額よりも上回っている場合に、侵害者の全利益を剥奪する方法を検討した。この点を検討している中で、有体物の「使用利益」の範囲を検討する必要性が明らかとなった。すなわち、もし「使用利益」の範囲が、侵害者が取得した全利益も含むのであれば、従来通りの「使用利益」返還に基づいて侵害者の全利益剥奪が可能であるのに対して、「使用利益」の範囲が限定されるのであれば、異なる法的構成を検討する必要があるからである。 【研究期間全体を通じて実施した研究の成果】 侵害利得における"有体物の無断使用"の場合に、ドイツの判例・学説は、侵害者の返還義務の対象を使用可能性ととらえ、この算定基準を客観的市場価格としていたと評価できる。 つぎに、知的財産権侵害の事例において“不当利得制度”を用いた場合の返還義務の対象と「権利の使用利益(使用料)」算定の問題について、ドイツにおいては知的財産権侵害の事例においても、侵害者の返還義務の対象を使用可能性ととらえ、この算定基準を客観的市場価格としていたと評価できる。また、我が国においても、ドイツと同様に、知的財産権の場面に応用できるものといえる。 最後に、侵害者の全利益剥奪の方法を検討している中で、有体物の「使用利益」の範囲を検討する必要性が明らかとなった。
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