研究課題/領域番号 |
23730097
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
鶴田 滋 九州大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (90412569)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 共有 / 遺産分割 / 固有必要的共同訴訟 / 家事事件手続法 |
研究概要 |
報告者は、平成23年度において、主に次の研究を行った。 第一に、「原告らが、建物所有権保存登記のうち被告の持分に関する部分のみの抹消登記手続を求めているにもかかわらず、裁判所が、被告に対して、これを超えて本件保存登記全部の抹消登記手続を命じることは、当事者が申し立てていない事項について判決をした違法があるとした事例(最判平成22年4月20日判時2078号22頁)」について判例研究を行い、これを平成23年6月に福岡地方裁判所で開催された福岡民事訴訟法判例研究会で報告した後、法政研究78巻4号において公表した。本研究課題との関連では、この研究の中で、報告者は、共有者の一人は、その持分に基づき、その持分の範囲内で、かつ、他の共有者の持分を侵害しない限りで、妨害排除請求権を行使できるという実体法上のルールが妥当していることを確認し、最高裁も本判決においてこのルールを承認していることを明らかにした。 第二に、「家事事件手続法における職権主義と手続保障」というタイトルの研究報告を、平成24年3月に福岡家庭裁判所で開催された福岡家族法研究会において行った。本研究課題との関連では、本報告において、平成23年に成立した家事事件手続法において導入された当事者の職権参加(家事事件手続法41条2項)は、家事事件手続の非訟性、すなわち手続の非方式性=裁量性から根拠づけられるというよりも、(人事訴訟を含む)家事事件における全面的紛争解決の要請から根拠づけられるべきであるため、この規定は、本法の適用される遺産分割手続のみならず、遺産分割の前提となる権利関係の確認の民事訴訟においても類推適用をすることが可能であることを主張した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
次の2つの理由による。第一に、日本の判例研究において、日本民法における共有者間の法律関係、とりわけ、各共有者の持分に基づく妨害排除請求権の範囲に関する規律を確認することができたため。第二に、日本の家事事件手続法の成立過程と家事審判法の趣旨を確認することにより、これらの法律における職権主義の根拠を明らかにすることができ、その結果、共有者の内部紛争における固有必要的共同訴訟の構造・手続規律を考察するための示唆を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度においては、次の研究を行う予定である。まず、前述の「家事事件手続法における職権主義と手続保障」の研究については、平成24年6月に日韓家族法学会で報告予定であるため、そのための準備を進め、最終的には、論文として法政研究等に公表する。次に、オーストリア法においては、共有物分割の訴えは共有者全員の固有必要的共同訴訟であるとされているため、この規律の詳細について文献等を精読することにより明らかにする。その他、共有者の内部紛争における固有必要的共同訴訟の構造を明らかにするためには、その前提として、共同訴訟、とりわけ必要的共同訴訟の構造を明らかにする必要がある。そのため、本研究課題の前提となる共同訴訟に関する基礎研究を継続して行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の研究計画に従って研究費を使用する予定である。 まず、日本の家事事件手続法、共同訴訟理論、共有理論、共有物分割の訴え、遺産分割審判などに関する研究を引き続き行うため、日本の文献を収集・精読するための図書・雑誌等の購入費用や、学会報告のための旅費等に使用する。 また、本研究課題に関係する日本民法・民事手続法、および、ドイツ・オーストリア法の民法・民事手続法等の文献の購入費用や、情報収集のために各地の学会・研究会等に参加するための旅費に利用する。 その他、情報の収集・整理のために、文房具やパソコンおよびその周辺機器等を購入するために研究費を使用する予定である。
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