本年度は、研究計画を延長しての最終年度であり、研究の総まとめというべき年度であった。また、本年度より、本科研の成果をさらに発展する新たな科研の採択を受けており、それとの接合をすべき年度としての位置づけを有している。 本科研においては、研究機関全体を通じて、主に特許法、著作権法において、知的財産の取引の動態が知的財産権の保護範囲の問題とどのように関連するかを明らかにしてきた。特許法においては、発明が累積的に行われていくという実体に着目し、特許要件のうち特に記載要件の判断をどのように行うべきか、それが特許発明の技術的範囲の決定においてどのような影響を有するのかについて明らかにしてきた。研究機関中に、単著を公表し関連する論文もいくつか公表している。 著作権法においては、著作物の取引の理論、特に価格差別理論に着目をして、著作権の消尽や権利制限規定の意義について多面的な分析を加えてきた。その結果についてもすでに公表をしている。 本年度は、それに加え、権利行使の場面における、知的財産権の制限にも着目した検討を行った。FRAND宣言された特許の権利行使に関する論稿を公表したのがその成果の一つである。単純な保護範囲についての議論からより多面的な知的財産法制の検討へとつなげる成果を公表できたことは、新たに採択された科研において、研究をより発展させていくうえで重要な一歩となると考えている。
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