研究課題/領域番号 |
23730120
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
一家 綱邦 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50453981)
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キーワード | 病院内倫理委員会 / 臨床倫理 / 医事法学 |
研究概要 |
本研究は課題名が示すように、理論的研究と実践的研究とに内容を二文する。 理論的研究に関する研究実績としては、第1に、論文「病院内倫理委員会の比較医事法学的研究―モデルと指導原理の探究―」により早稲田大学博士(法学)学位を取得したことを挙げる。同論文はアメリカのHospital Ethics Committeeに関する立法、行政規則、事件、裁判例、学説などを研究対象にし、病院内倫理委員会が本邦で活用されるために必要なモデルと法律学の指導原理を明らかにした。第2に、第24回日本生命倫理学会年次大会において、オーガナイザーとして公募シンポジウム「病院内倫理委員会の意義を考える」を開催し、自身も「本邦の病院内倫理委員会をめぐる現状と京都府立医科大学付属病院内倫理委員会の取組み」と題するシンポジスト講演を行った。第3に、第42回日本医事法学会総会において、個別報告「病院内倫理委員会の法的意義」を行った。第2、第3の成果については、今後それぞれの学会の紀要において論文発表する予定である。 実践的研究に関する研究実績としては、理論的研究の成果及び院内・学外協力者とのワーキング・グループ活動を元に、2012年7月に京都府立医科大学附属病院において臨床倫理委員会を設立し、活動を開始した。具体的には、①倫理委員会が有効に機能するための規程類や必要文書の整備、②実際に臨床現場で生じる倫理的問題に対する相談を受け、グループ内で倫理的観点からの検討を行い、相談者に助言をする相談活動、③倫理委員会の委員の中での研修会の実施である。臨床倫理委員会を研究倫理審査委員会とは独立して設置する医療機関は本邦では珍しく、また委員会組織を自己規律するための規程類や有効に機能するための相談申請書や対応マニュアルを整備する委員会は稀であり、その経験や知見を求めて複数の医療関係者や医療機関から問合わせ・協力依頼がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
理論的研究及び実践的研究ともに、上記の「研究実績の概要」で明らかにした通り、順調に研究成果を上げていると自己評価している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画を立案した際に検討した課題はおおむね明らかにすることができている。つまり、病院内倫理委員会に関する基本的理論とその実践的なモデルを明らかにすることができている。今後は、病院内倫理員会の発展的な活動形態を探る目的を持って、理論面・実践面での協力依頼のある研究・研究者とのコラボレーションを予定している。また、強いて言えば、実体法学・法解釈学における病院内倫理委員会の理論的位置づけを明らかにする点に課題を残しており、取り組みたい考えている。さらに、研究費の予算及び時間的な都合が着けば、積極的に海外の病院内倫理委員会システムを調査したいと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度と同様に、研究に必要な書籍の購入のための物品費が必要になる。国内の研究会やシンポジウムに参加して知見を深め、情報交換や意見交換を活発に行う目的のために旅費が必要になる。場合によっては、海外の研究機関や医療施設又は学会等への調査研究も予定する。人件費・謝金については、その他の財源などの利用可能性もあり、臨機応変に使用したいと考える。
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