研究課題/領域番号 |
23730121
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
久保山 力也 青山学院大学, 法務研究科, 助手 (00409723)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 法教育 / 法専門家 / ADR / 司法書士 / 法社会学 / 新領域法学 / 教育学 / 法曹論 |
研究概要 |
研究実績の概要は、以下の通りである。1 教材開発 法教育の実践ならびに効果測定のため、法教育の教材の制作を行った。実施計画にも明記していた通り、福岡県司法書士会との間で、『解釈のちから』と題する書籍を刊行した。同書は、『相談のちから』、『提案のちから』と続く3部作の第1作目で、「解釈」を通じ、法や正義の多元性と立法趣旨による判断の問題について、幅広く考察する教材となっている。指導案などを含めた読み物部分と、実際の教材部分(紙芝居形式)を包含し、授業実践の便を考慮したものとなっている。同書は、福岡県司法書士会ホームページhttp://www.fukuokashihoushoshi.net/order/item/index.htmlや、「法教育フォーラム」http://www.houkyouiku.jp/book.htmlにて紹介されている。また、平成23年度法務省法教育懸賞論文にて、日本司法支援センター賞を受賞した松本榮次氏論文は、同書のプレ試行版を用い、実際に小学校において代表者(久保山)が行った実践記録を踏まえてのものである。2 実践活動 北九州市若松区において実践準備を進めてきた。平成23年7月には、福岡県文教委員会福岡県議ならびに若松中央小学校校長、若松中学校校長、若松高等学校校長と、実践の問題について協議した。3 調査研究 平成23年11月に福岡県教育委員会を訪問し、法教育調査の概要、具体的な調査実施時期について協議した。結果、調査自体については次年度に行うこととした。また、教材開発ならびに実践活動の情報収集のため、文献調査、訪問調査を行った。4 成果公開 平成23年5月に、日本法社会学会にて「法教育を、どうするか」と題するシンポジウム(於:東京大学)を主宰し、自ら報告を行うとともに、法教育の諸課題について広く論じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度については、以下の通りである。1 教材開発 法教育教材として、『解釈のちから』を刊行できた点が評価される。同書では理論的な解説や学習指導案例、推薦文などによる解説の部と教材の部とを分け、使用の便に資するよう、工夫を凝らした。2 実践活動 北九州市若松区を対象に授業実践を行うよう、準備を進めてきた。小中高各学校の校長ならびに北九州市教育委員会関係者、福岡県議などと協議できたことは大きな成果であった。しかし、実際の実践はこれからであり、また田川市を対象とした実践は計画段階であり、平成24年度の課題となっている。3 調査研究 法教育調査を行うべく、調査票を作成した。実施時期については、福岡県教育委員会との協議の結果、平成24年度の早期に行うこととした。概要が確定した点は評価できるが、実施は同じく、平成24年度の課題となっている。4 成果公開 日本法社会学会でのミニシンポジウム主催ならびに、報告が大きな成果として挙げられる。登壇者に法学研究者、弁護士、高等学校教師などを含み、法教育の在り方や可能性、問題点、サービスモデルなどについて議論を行った。以上の諸点により、「(2)おおむね順調に進展している」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、以下の通りである。1 教材作成 引き続き法教育教材の作成に努め、「相談のちから」、「提案のちから」を完成させる。2 実践活動 福岡県北九州市若松区において実践活動を行う。また、田川市におけるプロジェクトを推進する。3 調査研究 早期に学校定性調査を実施、分析を行う。同調査は福岡県全県下高等学校、中学校、小学校等1133校に対して行われるもので、分析後さらにサンプルを抽出し、面接訪問調査を行う。さらに、これに先立って実施された、全国司法書士に対する法教育調査(計画:日本司法書士会、調査:久保山力也、以下同)、全国高等学校に対する法教育調査、全国特別区県市教育委員会/私学協会に対する法教育調査をあわせて検討し、法教育のニーズと課題を包括的に明らかにする。結果については、論文や学会等において公表する。4 成果公開 国内の法学系ならびに教育系学会において、研究成果を公開する。また、韓国との共同教材開発、プログラム開発に従事しているが、韓国法教育学会や法と理論学会などにおいても研究成果を公表する。5 研究計画の変更ないし課題 研究対象について、対象となる地区の諸事情から、主たる地区を福岡県田川市から北九州市若松区へと変更している。現在、若松区における実践を検討中であるが、場合によっては田川市においても可能となる。実践にあたっては綿密な調整が必要となるが、柔軟に対応して行く。特に福岡県教育委員会、北九州教育委員会や地元学校、PTAなどとも綿密な連携を保ちつつ、課題に対処していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費の使用計画は、以下の通りである。1 物品費について、分析研究用のコンピュータならびにソフトを購入する。また実践にあたり記録用の機器を整備するとともに、実践を効果的に進め、併せて検証に供する機器を購入する。2 旅費について 調査研究ならびに実践、成果公開のために、国内旅費、海外旅費を支出する。3 人件費について 調査票の発送ならびに集計にあたり、人件費を支出する。4 その他について 調査ならびに教材作成に経費を使用する。平成23年度では研究費支出が予定に満たなかったが、これは調査を平成24年度へずらしたためであり、次年度実施の調査において、適切に使用する。また研究成果公開にあたり、研究成果報告書を作成する。
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