研究課題/領域番号 |
23730122
|
研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
横山 久芳 学習院大学, 法学部, 教授 (30313050)
|
キーワード | 著作権 / 表現の自由 / 利用主体 / 私的複製 / 所有論 |
研究概要 |
本年度は、著作権保護と表現の自由との調整が問題となる著作権法上の論点として、著作物の利用主体の認定判断についての検討を行った。具体的には、放送番組の録画視聴サービスの適法性について判断した我が国とドイツの最高裁判例を素材とした研究を行った。同研究では、ドイツの判例を参考にしつつ、行為者の予測可能性を確保する観点から、物理的な利用主体と規範的な利用主体の認定作業を峻別しつつ、規範的な利用主体の具体的な認定方法を明らかにした。同研究の成果は、論文にまとめ、既に公表している(学習院大学法学会雑誌49巻2号97-142頁、ジュリスト1463号36-42頁参照)。 また、本年度は、昨年までの研究成果を踏まえて、著作権法を含む知的財産法の制度設計がいかにあるべきかについて、知的財産権の正当化根拠に遡った研究を行った。本研究では、近時、憲法学において、①憲法上の人権保障に国家の公益に基づく制度設計を覆す「切り札」としての意義を認める考え方、及び、②マスメディアの報道の自由を公共財としての自由な表現空間の確保という公益的な観点から正当化する考え方が主張されていることから、これらを参考にしつつ、知的財産法が、一方で、創作者の自律的な創作活動を支援するために、「切り札」としての創作者の権利(「自然権的権利」)を保護しつつ、他方で、創作活動の奨励を通じて公共財としての情報環境を整備するという公益目的を実現していることを明らかにした。その上で、創作者と他者の利益調整のあり方として、知的財産法が創作者の基本権を実現する段階では創作者の利益を優先的に保護すべきであるが、創作者の基本権の実現に必要なレベルを超えて公益的観点から創作者の利益を保護する場合には、他者の利益に十分配慮し、公益目的に即した合理的な保護が与えられるべきことを明らかにした。同研究の成果は、近日中に公表する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度は、平成24年度に引き続き著作権保護と表現の自由との調整問題として、利用主体の認定のあり方についての研究を行い、その研究成果を論文として公表することができた。また、平成25年度は、憲法学における表現の自由等に関する研究を行い、その知見を活かして、著作権法を中心とする知的財産法の機能やその制度設計のあり方について、一定の知見を得ることができた。現在、その研究成果についても、論文を執筆しているところである。この点を勘案して、「当初の計画以上に進展している」との自己評価を行っている。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度に引き続き、著作権法を中心とする知的財産法の機能や制度設計のあり方に関する総論的な研究を続行し、これまでの研究成果の総括を行うこととする。上記研究を行うに当たって、本年度も、昨年度と同様、内外の研究会、シンポジウムに参加し、本研究のテーマに関する情報収集及び意見交換を積極的に行いたいと考えている。
|