本研究の目的は、ベトナムの独立戦争にあたる第一次インドシナ戦争のなかで、ベトナム政府が戦時総動員体制を構築し、人的資源や物的資源を戦争目的に利用する過程を検証することである。とくに分析の対象としたのは、(1)ソ連や中国で開発された戦時動員の政治的・軍事的技術をベトナム政府が導入する経緯、(2)法や行政制度の整備を介して、総動員体制が中央集権的な制度として確立する過程、(3)総動員体制の構築が中央集権的に進むなかでの、中央政府と地方政府の関係の再編、の三点である。本研究ではまた、政治地理学・自然地理学の観点から、地方ごとに戦時下の情勢が大きく異なる点に着目し、その相異の試論的分類を試みた。
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