研究課題/領域番号 |
23730134
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
西岡 晋 金沢大学, 法学系, 准教授 (20506919)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 福祉国家 / 制度変化 / 言説政治 |
研究概要 |
平成23年度は福祉国家制度の制度変化の政治的メカニズムの解明という研究目的の達成に向け、第一に先行研究の検討および分析枠組みの構築、第二に事例研究の基礎的調査、の二点を、研究計画に沿って進めてきた。 第一の先行研究の検討および分析枠組みの構築に関しては、まず制度変化論におけるHackerらの議論を参照し、制度変化を制度放置、制度転換、制度併設、制度転用の4類型に整理する彼らの議論の有効性を確認した。また、Schmidtの言説的制度論をはじめとする言説政治論の議論を渉猟し、制度変化における言説やアイディアの重要性を検討した。その上で、制度変化論と言説政治論との架橋を試み、言説資源動員という観点を組み込む形で分析枠組みの構築を図った。すなわちこれは、変化の類型論にとどまっていた従来の制度変化論に、言説政治論の観点を組み込み、制度変化と言説・アイディアの照応関係から変化のメカニズムを探ろうとするものである。これらの点は先行研究ではあまり行われてこなかった試みであり、学術的な意義は高いといえる。とはいえ、より精緻な分析枠組みの構築においては、事例研究を踏まえた修正や練り直しが必須であり、事例研究を進める中で、よりブラッシュアップを図っていく予定である。 第二の事例研究の基礎的調査では、生活保護政策に関連する調査を実施した。生活保護政策の制度概要や歴史的発展過程、現状の課題等の把握に努めた。日本の生活保護制度は中央地方の融合的関係が埋め込まれていることに特徴があり、その特性が制度変化にも何らかの影響を及ぼしている可能性が判明した。中央地方関係を踏まえた福祉国家研究や福祉政治学は、これまであまり行われていなかった分野であり、その意味で今後の発展可能性を考えた場合、意義のある発見、仮説であるといえるだろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
福祉国家制度の制度変化の政治的メカニズムの解明という研究目的の達成のため、順次研究を進めているが、平成23年度は論文の刊行といった形での成果公表には至っていない。これは、そもそも当該分野での研究成果発表の場が不足気味であることに加え、助成金の交付が、東日本大震災への対応を優先させるためもあり、当初予定よりも遅延したため、研究のスタート自体が遅れ気味であったことが大きな要因として存在する。進捗状況の遅滞の背景にはそうしたやむを得ぬ事情があったことも考慮せざるを得ない。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度(平成23年度)は、助成金交付の遅延も含め、研究の進捗が必ずしも計画通りに進まないところもあったが、今後は研究の遅延を取り戻すべく、迅速に研究を進めていく予定である。 24年度以降は事例の本格的な研究に取り組む予定であり、生活保護政策についてはすでに基礎的調査を行ってきたところである。なお、当初の研究計画では、平成24年度は医師数政策を、25年度は生活保護政策を事例として取り上げ、分析する予定を立てていたが、順番を入れ替え、24年度に生活保護政策を、25年度に医師数政策の事例分析を進めることとしたい。現在、生活保護受給者が過去最大となり、メディアでも盛んに言及され、社会問題化されており、生活保護政策に対する社会的な関心も非常に高まっている。より喫緊の課題として認識されている生活保護政策を先に取り上げた方が、社会的にみても有意義な研究となりうるものと考えた次第である。平成24年6月には日本比較政治学会において、生活保護政策の事例研究を含めた研究報告を行い、研究成果の一部を公表する予定である。なお、この変更による研究費総額の変更等は発生しない。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度(平成24年度)は事例研究に本格的に取り組む。先に記したように、23年度の助成金交付が遅延したため、当該年度に研究費をすべて使用することはできなかった。そのため23年度に残された研究費は当該年度に実施予定の分析枠組みの検討や精緻化を行うために必要な図書費等の購入に用いる予定である。 同時並行的に24年度には、当該年度の研究費を用いて事例研究を実施する予定である。対象とする政策制度の事例としては、当初の研究計画にあった順番を入れ替え、生活保護政策を先に分析する予定である。したがって、研究費は生活保護政策に関連する図書、資料類の購入費、研究成果発表のための出張費等に使用する計画である。
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