研究概要 |
政党は矛盾する目的を抱えている。一方では、党内の議員ごとに異なる選挙事情に応える必要がある一方、政権運営、政策形成のためには所属議員に統一的行動を課さなくてはならない。本研究の目的は、政党はいかにして所属議員の個別の選挙区事情に配慮しつつ、統一的行動を議員に課しているのかを明らかにすることである。 平成23年度は、収集したデータからを用いて、建林正彦・藤村直史「政権末期における自由民主党の政策形成と議員行動の変容:2009年自由民主党議員への政治意識調査から」(『法学論叢』169巻9号)を公表した。この論文は、選挙制度が議員の選挙活動や政党の一体性に与える影響を分析したものである。選挙制度が政党の一体性に影響をあたえることは従来も指摘されてきたことであるが、本論文では、単に制度だけではなく、政治アクターがその制度を理解し使いこなすことが決定的意味をもつということを明らかにした点に意義があると考える。 また、理論部分を、Naofumi Fujimura. "Electoral Institutions and Legislators’ Representation of Constituencies: Empirical Evidence from Japan’s SNTV and SMD Systems" Essex-Kobe Research Collaboration Seminar (Kobe University, Japan, September 23, 2011)において報告した。現時点で草稿ではあるが、選挙制度によって議員の選挙事情がいかに変わるのかを理論的に検討したものであり、公表に向けて修正することで、選挙制度が議員の行動に及ぼす影響をより詳細に明らかにできると考えられる。
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