研究課題/領域番号 |
23730137
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
安井 宏樹 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (60396695)
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キーワード | 議院内閣制 / 分割政府 / ガバナンス / 立法過程 / 政策立案 / 政党政治 / ドイツ / 日本 |
研究概要 |
研究の2年目となる今年度は、研究の理論的枠組みについての考察を、比較の視点を織り交ぜながら進め、その中でのドイツの特徴について分析を進めた。 こうした研究活動を通じて見えてきた課題は以下の通りである。(1)20世紀末から急速に進行したグローバル化や脱産業化といった構造的環境変化によって、2000年代の政治に求められるアジェンダは変化してきており、1970年代のものとは異なる新たなガバナンスのあり方が求められている、(2)新たなガバナンス構造の方向性として、変化に対応し得る能力としての「専門性」が優位に立つ「迅速な決定」への志向が強まっているが、与野党間の時間を要する交渉と合意を必要とする分割政府はそれにそぐわないものであり、代表制のあり方を再定位する議論が必要となってきている、(3)しかし、議院内閣制の下での分割政府を生む強力な第二院を有する日本とドイツは、新たなガバナンスの必要性が高まってきた冷戦後にも、統治機構の大枠をほとんど変えることなく維持してきた。 こうした研究活動の成果を活用し、ドイツにおける分割政府については、(1)その出現と態様には時代的な差異があり、(2)その差異には政党システムのあり方(とりわけ、多党化と二大政党の勢力の伯仲化)が大きく影響している、との知見を得て、論文「Divided government and legislation process in Germany」を執筆し、University of Tokyo Journal of Law and Politicsに掲載した。 また、二大政党によるガバナンスのあり方を揺るがし始めている第三政党のポテンシャルについての研究討論を日本比較政治学会の2012年度研究大会(於・日本大学)で行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの収集や現地調査などの面では当初の計画より遅れが見られるものの、分析・検証や仮説枠組みの構築といった面では当初の計画以上に進展しているところもあるため、全体的に見れば、おおむね順調に進展しているものと評価できるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、データ収集の遅れている分野での調査に尽力するとともに、日本の事例についての分析・検証を推進して、研究成果の公表に向けての準備に努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年2月以降の研究活動において国内旅費や物品費等の支出が必要となる可能性があったことに鑑み、一定程度の研究費を残していたが、健康上の支障等により、次年度に繰り越す結果となった。次年度は、データ収集の遅れている分野での調査に使用する計画である。
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