研究の3年目となる平成25年度は、これまでの研究の成果を活用して、政府と市民社会との間での相互作用が形作るガバナンスの態様についての研究討論を日本比較政治学会2013年度研究大会(於・神戸大学)で行った他、研究で得られた知見を取りまとめるべく、論文の準備を進めた。残念ながら平成25年度中には公刊することが間に合わなかったものの、成果の一部は、平成26年度夏にミネルヴァ書房からの出版を目指して準備中である。なお、研究期間全体を通じて得られた知見は以下の通りである。 (1)グローバル化や脱産業化といった社会経済的な構造的環境変化に加えて、冷戦の終焉という国際環境の変化にもさらされた2000年代の政治には、変化に対応するための政策を立案する「専門性」が優位に立つ「迅速な決定」への志向が強まっており、分割政府の状況が必要とする与野党間の交渉・合意という多くの時間を必要とする政治過程と齟齬を起こしている。 (2)ドイツと日本での分割政府の出現と態様には時代的な差異がある。両国とも、保守的な政党が得票率において比較的優位に立っている時期においては、分割政府の出現頻度は低かったが、多党化の進行と二大政党の伯仲化という政党システムのあり方の変化によって、分割政府の出現頻度は大きく高まった。 (3)分割政府期の立法過程の特徴は、日独両国で大きな差異が確認された。ドイツでは分割政府期に政府提出法案の採決で野党が反対する率が低下する傾向が見られるのに対し、日本では、ドイツとは逆に政府提出法案の成立率が大きく低下することが確認された。
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