今年度は、昨年度想定以上に研究が進展したため、より一般的な理論的観点からの研究を中心に行った。まず、有権者の投票決定に占める業績投票的要素とその変遷の分析であるが、この変化を有権者の意識レベルでの分析から明らかにすることを計画した。昨年度、政党認識については明らかにしたが、それと投票との関係を分析するためには、日本の場合、どうしても候補者要因について議論しなければならないと気が付いた。そのために、選挙区レベルの変動と全国レベルの変動の比較を行い、日本においては新選挙制度の導入以降、有権者が全国レベルの変数である業績やイデオロギーに強く影響されるようになったということを、世論調査データから明らかにした。その成果はイギリス日本学会において報告しており、そこでの分析を投稿にむけて改稿を行っている。 また、経済投票モデルへの一般化の可能性についても検討し大きな成果があった。アメリカのデータを用いても日本のデータを用いても、選挙の直前になると有権者の経済状況認識や、社会経済的背景をもとに、彼または彼女の投票先を予測することが容易になる。このような事実は知られていたが、これを説明する理論はこれまで考慮されてこなかった。昨年は経済投票モデルの一般化を検討する中でこの課題に取り組み、有権者の意思決定のタイミングに関するモデルを構築することでこれを明らかにできるのではないかと考えた。その成果は行動軽量学会、アメリカ西部政治学会で報告し、これも投稿に向けて改稿中である。
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