最終年度は、最終成果の取りまとめの作業を行った。具体的には、6月にカナダ政治学会で研究報告を行い、カナダ政治学会の研究動向の把握と研究への反映に努めた。この成果を踏まえ、夏休み以降最終成果となる論文の執筆に取り掛かった。この論文については、年度内に完成させるには至らなかったが、2014年5月の日本選挙学会において報告することが決定している。この選挙学会での報告によって、日本における政治学研究の視点からコメントを受け、それらを修正のうえ査読誌に投稿する予定である。 3年間の研究によって、日本とカナダの政府間関係の特徴とそれが財政移転改革に及ぼした影響について以下の二つの成果を得た。 第一に、日本とカナダの政府間関係を結ぶ影響力ルートについては、行政ルートは類似点を持つ一方で、政治ルートのうち政党を通じたルートが大きく異なる。具体的には、カナダの政党組織が中央と地方で分断されているのに対して、日本ではつながっている点が異なっている。 第二に、これらの政府間関係の特徴の違いによって、1990年代以降の財政移転改革の帰結に違いがみられる。カナダでは、政党が地方利益を代表せず、改革は中央政府の意向に沿ったものとなった。具体的には、税源移譲を求める地方側の動きが改革に反映されることはなかった。これに対して、日本では、与党が地方側の意見を改革の内容に反映させた。その中では、ひとたび政府内で決定された税源移譲の税目が与党によって覆されるという大きな変化が見られた。
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