日本とドイツの比較福祉国家研究を行うため、日本とドイツそれぞれについて論文・著書を執筆してきた。日本については、2011年末に「日本型福祉国家と農業団体―共済制度の経路依存性と分立型年金への道」(城下賢一との共著)という論文を執筆した。そこでは、歴史的制度論の議論を援用しつつ、1950年代、農協が公的年金の拡大に強く反対し、分立型年金が成立していく過程を追うと同時に、その経路依存性効果によって日本の分立型年金が固定化される様相を描き出した。ドイツについては数多くの論文・著書を執筆した。たとえば、日本研究と同様に、年金について、歴史的制度論を用いながら執筆したものに、「ドイツ福祉国家の漸進的変化―戦後ドイツ年金制度の発展と変容」がある。ここでは、ドイツの1957年年金制度が経路依存的な発展を示したことを明らかにしている。 最終年度は、これまでの日独比較研究をまとめた論文を執筆する予定であったが、それはかなわなかった。比較の枠組みとなる理論(歴史的制度論)については、多くの文献を読み進め、かなり理解が深まったと思う。準備作業はできているので、今後、これをなんらかの成果として発表するよう努力していく所存である。学会報告などの研究実績はあるものの、日本とドイツを一つの論文の中で取り上げ、比較するという作業までにはいたらなかったことは、きわめて残念であり、不勉強を深く恥じるものである。今後の課題として、これからも日独比較福祉国家研究に取り組んでいく所存である。
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